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3Dプリンター
- 公開日:2025.7.11
- 更新日:2025.7.11
夏場のPLAの取り扱いについて

~高温多湿な時期に起きやすいトラブルとその対策~
PLA(ポリ乳酸)は扱いやすく、3Dプリンターで最も一般的に使用されるフィラメントの一つですが、日本の夏のような高温多湿な環境では、いくつかの注意点があります。
本記事では、特に夏場にPLAを使用する際に発生しやすいトラブルとその対策についてご紹介します。
1. プリンター庫内温度の上昇
扉や天面を開けながら印刷を行いましょう
PLAをご使用の場合、夏場は3Dプリンター庫内の温度上昇に特に注意が必要です。
庫内が高温になると、PLAが過剰に溶け出し、以下のような問題を引き起こします:
- ノズル内部でのフィラメント詰まり
- 印刷物の冷却不足による造形不良

対策
PLAをご使用の際は、扉や天面を開けながら印刷を行ってください。
熱がこもることを防ぎ、冷却効果を保つことで、造形トラブルを軽減できます。
2. フィラメントの除湿
湿気による押し出し不良にご注意ください
フィラメントは吸湿性があり、湿気を吸うことで押し出し不良やノズル詰まりなどのトラブルを引き起こします。
対策:
フィラメントが吸湿いたしますと、著しい押し出し不良を引き起こします。
未開封品であっても、加熱乾燥機能のあるフィラメントドライヤーで、事前に8~10時間の乾燥をおすすめいたします。
日本の気候における使用限度の目安:
保管場所 | 使用限度の目安 |
---|---|
プリンター庫外または庫内 | 約3日間 |
ドライボックス内 | 約2〜3週間 |
フィラメントドライヤー内 | 約半年間 |
開封後であっても、冬場の低湿環境であっても、上記の期間を目安に再乾燥を行うことが造形品質の維持につながります。
3. 完成品の変形に注意
使用後の保管環境にも配慮を
PLAは耐熱温度(HDT)が約60℃前後と比較的低いため、完成品が高温環境に置かれると、たわみや変形を起こすことがあります。
発生しやすい場面:
- 夏場の車内や窓際
- 家電の近くや熱がこもる棚の中など
対策:
- 完成品は高温・直射日光を避けて使用、保管する
- 耐熱性が求められる用途にはPETGやASAなどの耐熱性がある素材への切り替えも検討
4. プリンター設置環境の温度管理
周囲の空気温度も冷却性能に影響
室温の上昇により、プリンターの冷却ファンが本来の性能を発揮できなくなることがあります。
また、プリンター本体のモーターや制御系にも余計な熱負荷がかかり、エラーや動作不安定を引き起こす場合もあります。
対策:
- プリンターはできるだけ風通しの良い場所に設置し、排熱スペースを確保
- エアコンや送風機などで室温30℃以下を目安に環境を整える
- 熱がこもりやすい棚の中や狭所での運用は避ける
まとめ
夏場のPLA使用では、温度と湿度への対応が品質を左右します。
特に上記で挙げた「庫内温度の管理」「フィラメントの乾燥」「完成品の保管温度」「周辺環境の室温管理」の4点を意識することで、トラブルを防ぎ、快適な3Dプリントが実現できます。
正しい対策を行い、夏でも安定したPLA造形を行いましょう。
身の回りの環境に少し配慮するだけで、トラブルの多くは回避できます。
ぜひ、日々のプリントにお役立てください。