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3Dプリンター
- 2022.4.15
[自動車業界]3Dプリンターの活用事例から読み解く導入効果とは?

自動車業界で3Dプリンターを活用したものづくりが始まっています。なぜ、大手自動車メーカーを中心に3Dプリンターを活用したものづくりの取り組みが始まっているのでしょうか?
今回は、各自動車メーカーの3Dプリンターの活用事例の紹介を始め、3Dプリンターの特徴までご紹介します。この記事を読めば、3Dプリンターを導入する効果が理解できるようになるはずです。ぜひ、最後まで記事をお読みになってください。
自動車業界の3Dプリンター活用事例5選
国内外の大手自動車メーカーは、3Dプリンターを活用した自動車製造に取り組み始めています。どのように3Dプリンターを活用しているのでしょうか?まずは、各社の3Dプリンター活用事例をご紹介します。
スープラの復刻純正部品を製造(トヨタ自動車)

トヨタ自動車では「GRヘルテージパーツ」と呼ばれるプロジェクトが開始されています。GRヘルテージパーツとは、思い出の詰まった愛車に乗り続けたいと願うお客様の想いに応えるために復刻部品を製造・販売するプロジェクトです。
このプロジェクトでは、1986年に販売開始されたスポーツカー「A70スープラ」の復刻部品が販売され始め、大きな話題を集めています。
自動車メーカーは、モデルチェンジ後など生産終了後は、金型の管理や在庫の保管に係るコスト面などからメンテナンスが難しいという課題がありました。このような課題をお客様の要望に合わせた生産体制を実現できる3Dプリンターを導入することで解決しています。
サーキットカーのパーツ製造で軽量化を実現(ブガッティ)

ブガッティは高性能スポーツカーやレースカーを製造しているイタリアの自動車会社です。2021年8月に開催されたクラシックカーイベント「ザ・クエイル・モータースポーツ・ギャザリング」にて、サーキット専用ハイパーカーのボリードを市販化すると発表して大きな話題を集めました。
ボリードは燃費を向上させ、最高時速500km/h以上の運動性能や乗り心地を実現するために、各パーツの軽量化がされています。例えば、自動車のボディには宇宙産業向けに使用されるカーボンファイバーを採用。また、自動車で使用される全てのネジは、チタン製にして重量の軽量化を実現しました。これらの部品を3Dプリンターで実現するなど製造プロセスも大きな注目を浴びています。
独自構造の軽量で強度を持つタイヤを製造(ミシュランタイヤ)
ミシュランタイヤは、2019年に企業のビジョン「Michelin Visionary Concept」を発表する中で地球に優しいエアレスタイヤを開発すると述べました。バイオ素材やスチールなどのリサイクル材を使用したタイヤに切り替えられる方向です。
このようなサスティナブル戦略を実現するために、3Dプリンターを活用することを発表して大きな注目を浴びています。3Dプリンターであれば、強度・軽量化・断熱性の向上の効果が見込めるハニカム構造のタイヤが簡単に作れます。
また、同社は自動車に搭載されたセンサーにより、天気予報や走行距離、自動車の状況などをリアルタイムで収集し、タイヤのトレッドデザインを提案するサービスを開始。タイヤのトレッドデザインを描き、3Dプリンターで出力するサービスを提供するなどサスティナブル経営に取り組み始めました。
治工具制作の内製化を3Dプリンターで実現(フォルクスワーゲン)
フォルクスワーゲンでは、外部業者に委託していた治工具制作の内製化を実現するために3Dプリンターを導入しました。製造現場には、低価格のデスクトップ3Dプリンター7台が導入されており、生産現場で利用される治工具の約1,000点の部品を製造しています。
治工具制作の内製化を実現することで、開発費用は110,000円から2,900円まで削減に成功、開発期間は56日から10日に短縮できました。現場の意見を反映できるため、高性能な治工具が製造できます。3Dプリンターの設置から、約2か月で投資利益率100%を達成している成功事例です。
3Dプリンターで開発する電気自動車を開発(XEV)
X Electrical Vehicleは、3Dプリンターを活用して小型電気自動車「XEV YoYo」を製造しています。「XEV YoYo」は、長さ2,500mm、幅1,500mm、高さ1,575mm、総重量750kgで軽自動車クラスのL7に分類される小型電気自動車です。小回りできて都市部の移動手段に最適な乗り物としてだけではなく、モーター出力は7.5kW、最高時速70kmなど性能の高さも注目を浴びています。
3Dプリンターで製造されているため、デザインの自由度が高く、3日で1台を製造できることが大きな強み。1台98万円とリーズナブルな小型電気自動車が登場したと、業界でも大きな注目を浴びています。
自動車業界で3Dプリンターを利用するメリット
各自動車メーカーで3Dプリンターを活用した自動車製造の取り組みが開始されていますが、どのようなメリットがあるのでしょうか?次に、自動車業界で3Dプリンターを利用するメリットをご紹介します。
軽量化
3Dプリンターを活用して部品を作れば、自動車の軽量化が実現できます。軽量化を実現する方法として、アルミやステンレス製のボルトからチタン製のボルトに切り替えるなどがあげられます。チタン製のボルトは軽くて丈夫で錆びづらい特徴がありますが、価格が高いというデメリットがありました。
しかし、3Dプリンターを活用してチタン製のボルト製造を内製化すればコストの問題が解決できます。自動車の軽量化は、燃費と性能の向上に必要不可欠です。そのため、各自動車メーカーが3Dプリンターを活用した自動車製造に取り組み始めているのです。
生産性向上
3Dプリンターを導入すれば、製造現場の生産性向上ができます。新技術のデモンストレーションを目的としたプロトタイプ製造や特別使用車の部品製造などに威力を発揮します。小回りの利く小ロット生産を上手く活用していけば、自動車の開発スピードを上げていけます。
多品種少量生産
3Dプリンターは多品種少量生産のものづくりができます。お客様の要望に合わせて3Dデータを編集して造形をすれば1人1人に見合った自動車部品を開発できます。このような多品種少量生産を行えば、資源を無駄遣いする恐れもありません。
近頃は、お客様のニーズが多様化していることから、多品種少量生産ができる3Dプリンターの技術が注目を浴びてきています。
自動車業界で3Dプリンターを利用するデメリット
自動車業界で3Dプリンターを利用する場合には、次のようなデメリットがあるため注意してください。
導入コストが高い
自動車業界で3Dプリンターが導入され始めていますが、3Dプリンターの装置は高いです。古くからある熱溶解樹脂積層方式(FDM/FFF)の装置は、数十万円と安価な価格で購入できるようになってきました。しかし、金属に対応できる3Dプリンターは数百万円から数千万円するものなどがあります。そのため、気軽に導入できるものではありません。
金属に対応できる3Dプリンターの基礎知識に関しては、下記の記事を参考にしてください。
参考記事:金属3Dプリンターの基礎知識について解説!メリット・デメリットは?
ノウハウが必要
3Dプリンターを利用する上ではノウハウが必要になります。なぜなら、3Dプリンターには長所と弱点があるからです。これらの特徴を把握した上での設計が必要になります。
例えば、3Dプリンターは型抜き等の縛りのない設計や複数部品の一体化が得意です。その一方で、極端に板厚が薄いものは製造できません。また、サポート材を使用しなければいけない場合は、造形物の品質が下がる恐れがあります。このようなノウハウが必要になるため、導入前に使いこなせるかを検証してください。
大量生産には不向き
3Dプリンターは大量生産には不向きです。なぜなら、金型を用いたプレス加工や切削加工、鋳造などの製法の領域に3Dプリンターの技術が追い付いていないからです。
生産量とコストのバランスという観点では、3Dプリンターで大量生産は向いていません。そのため、部品の大量生産を検討している場合は、3Dプリンターの性能が上がるまで従来の製法を採用した方がよいでしょう。
自動車業界の3Dプリンターに関するよくある質問

自動車業界で導入が始まっている3Dプリンターですが、当社にも多くの質問が寄せられています。
Q.3Dプリンターの市場規模はどれぐらいですか?
REPORTOCEANの調査結果によると、自動車業界向けの3Dプリンターの世界市場規模は約259億円です。2022年から2030年まで年平均23.8%で成長して2030年度には約1兆7,601円に達すると予測されています。
Q.3Dプリンターを導入したい場合は、どこに依頼すれば良いですか?
3Dプリンターを導入したい目的に応じて依頼先を変えましょう。
デザインやコンセプトの開発、プロトタイプの検証であれば、自動車業界向けの3Dプリンティングエンジニアリングサービスを利用してみてください。具体的な提案や高性能な機材を導入してもらえ、要望を実現してくれるでしょう。
治工具制作の内製化、部品の製造をしたい場合は、デスクトップ型の3Dプリンターを扱っている業者にご相談してみてください。その理由は、低価格で高性能な機材を取り扱っているからです。当社もデスクトップ型の業務用3Dプリンターを取り扱っており、お客様に適した3Dプリンターをご提案していますので、購入を検討されている方はぜひ、お問い合わせフォームからご連絡ください。
Q.自動車業界で3Dプリンターは普及していきますか?
世界全体で見ると自動車業界で3Dプリンターが普及し始めてきていますが、国内では普及はしていません。しかし、各自動車メーカーが3Dプリンターを導入し始めています。
デザインやコンセプトの開発、プロトタイプの検証、製造前のサンプリングなど、さまざまな利用用途に使用できることが大きな魅力です。また、3Dプリンターで取り扱える材料は多種多様です。そのため、今後、自動車業界で3Dプリンターは普及していくことでしょう。
まとめ
自動車メーカーでは、3Dプリンターを採用したものづくりが始まっています。3Dプリンターは、新技術のデモンストレーションを目的としたプロトタイプ製造や特別使用車の部品製造などに威力を発揮します。
また、多品種少量生産ができて復刻部品の製造にも威力を発揮するものです。自動車業界の3Dプリンターの市場規模は急拡大しています。そのため、各社の動向を見据えながら、3Dプリンターを積極的に活用してみてください。
もし、治工具制作やボルトなどの製造を検討している方は、FLASHFORGE社の業務用3Dプリンターでも実現可能です。業務用3Dに興味がある方は、下記の記事をご覧になってみてください。
参考記事:業務用3Dプリンター選びのポイントとおすすめ製品5選【素材適応表あり】
ぜひ、これを機会に検討してみてください。