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3Dプリンター
- 公開日:2022.4.12
- 更新日:2022.12.16
歯科用3Dプリンターとは?導入前に見るべきポイントについても解説!
一般的に3Dプリンターと言えば、製造業が試作品を造形して意匠や構造をチェックしたり、従来の加工では難しい小ロットの製品を作ったりするのに活用されていた機器でした。
しかし、昨今では3Dプリンターの技術が発展してきたこともあり、歯科医療の現場で「歯科用3Dプリンター」を導入するケースが増えつつあります。
今回の記事では、歯科用3Dプリンターがどのようなモノなのかについて、基礎知識を解説します。また、導入を検討する方向けに確認しておくべきポイントや、歯科目的で使えるFLASHFORGEの3Dプリンター「Focus 6K」についてもご紹介します。
ページコンテンツ
3Dプリンターとは?
3Dプリンターとは、3DCADや3DCGなどのデータを元にして、樹脂や金属製の模型を造形できる機械のことを指します。
3Dプリンターは、使用する素材や造形の仕組みなどの違いにより、熱溶解積層方式や光造形方式などのさまざまな種類があります。いずれの方式も、基本的には1層ずつスライスされたデータの通りに材料を積み重ねていき、立体物を造形する仕組みです。
使用する素材や造形方式により、かかるコストだけでなく、造形物の仕上がり方や特性にも違いが表れます。3Dプリンターの使用方法や一般的な活用事例、使える素材については以下の記事も参考にしてみてください。
参考記事:3Dプリンターとは?活用事例を交えて仕組みや使用方法について簡単に解説
参考記事:3Dプリンターで使える素材とは?種類と特徴を徹底解説します【対応表あり】
歯科用3Dプリンターの特徴や仕組みについて
歯科目的で使用されている3Dプリンターの多くは、「光造形方式」と呼ばれるタイプが採用されています。光造形方式は、造形後の処理に手間がかかるものの、微細な造形が可能で、他の方式に比べて表面の仕上がりや寸法精度に優れているのが特徴です。
光造形方式は、液体のUV硬化性樹脂であるレジンを材料とします。造形の仕組みは、レジンに光を照射し硬化させ、1層ずつ積層することで模型を作り上げます。
光造形方式は、大きく分けて「SLA」と「DLP」の2種類のタイプに分類されます。SLAは、光を一筆書きのようにして照射し、レジンを硬化させる仕組みで、光造形のなかでは古くからある方式です。光造形方式の総称としてSLAと呼ぶ場合もあります。
一方でDLPは、プロジェクターを用いて光を照射し、レジンを硬化させる仕組みです。SLAと違って面で光を照射するため、DLPの方が複数の模型をスピーディーに造形できます。DLPに似た仕組みとして、プロジェクターではなく液晶ディスプレイのLCDパネルを用いた「LCD」方式もあります。搭載しているLCDパネルは、解像度が高いほど、より精密な造形が可能です。
歯科用3Dプリンターの用途
歯科用3Dプリンターの代表的な用途は、歯列模型や矯正歯科、インプラント治療などが挙げられます。
歯列模型は、3Dプリンターを活用することで、必要に応じて模型を用意できます。データさえあれば歯列模型そのものを保管していなくとも、必要なときに用意できるので、模型の保管スペースを別の用途で活用できるようになります。また、すぐにモデルを用意できることから、チーム内で治療計画を立てやすいのもメリットです。歯列模型を患者に確認してもらい、治療の了解を得るインフォームドコンセントとしても活用できます。
矯正歯科は、歯科用3Dプリンターを利用することで、マウスピース型の矯正装置「アライナー」を造形、インプラント治療においては、インプラントの埋入する深さや角度を事前にチェックするための「サージカルガイド」を造形するのに活用されています。
これらは、従来多くの製作工程や日数を必要としていたものが、口腔内スキャナーや歯科用3Dプリンターの利用により、自社で製作できるようになり、工程やコストを少なく抑えることが可能に。また、治療時間の短縮や精度の向上も期待できます。
これらの用途以外にも、口腔内スキャナーを用いて義歯を作る研究も行われています。
歯科用3Dプリンターの導入前に見るべきポイント
ここでは、歯科用3Dプリンターの導入を検討している方向けに、予めチェックしておくべきポイントについて解説します。各ポイントを押さえておくことで、導入後のトラブルを抑えられるほか、満足度の高い製品を選べるようになります。
精度の高さや安定性
歯科用3Dプリンターは、造形物で治療計画やインプラント治療のチェックなどを行うため、造形物に高い精度が求められます。光造形法の4K LCDパネルを用いた3Dプリンターなら、わずか数十ミクロンの単位で、精密な造形が可能です。また、安定性の高い機器であれば、積層痕の目立ちにくい造形を実現します。
造形スピード
自社で3Dプリンターを導入することで、外注の手間や運送にかかる時間を削減できますが、より早く造形物を得るには、3Dプリンターの造形スピードが重要になります。
歯科用3Dプリンターの多くは、光造形法が採用されています。なかでもDLPやLCDのタイプは、プラットフォームに対して面で光を照射し、材料を硬化させるため、複数の模型でもスピーディーに印刷できます。ただし、DLPやLCDの3Dプリンターは、造形スペースが広いと解像度が低く設計されている場合があります。機器の解像度の高さをよく見た上で、造形スピードも確認するようにしましょう。
使える材料
3Dプリンターは、機器によって使える材料が異なります。一般的な3Dプリンターは、診断用の模型のみになりますが、一部の高機能モデルは、矯正アライナー用、サージカルガイド用、プレス・鋳造用などの模型を造形することができます。歯科用3Dプリンターの導入を検討する際は、どのような模型を造形するか判断した上で選ぶようにしましょう。
コスト
歯科用3Dプリンターを運用すると、機械の導入コストだけでなく、ソフトウェアなどの初期コスト、材料などのランニングコスト、メンテナンスなどの維持コストがかかります。これらを考慮して、自社で3Dプリンターの導入を検討した際に、どれだけのコストメリットが得られるかをよく見ておきましょう。
しっかりと検討ができていれば、歯科用3Dプリンターの導入後に、外注で模型を製作した場合と比べて大きくコストを削減できます。
歯科(医療)用目的で使えるFLASHFORGEの3Dプリンターを紹介
ここでは、歯科(医療)用目的で使える、FLASHFORGE社の光造形法3Dプリンター「Focus 6K」をご紹介します。
注意点として、承諾書なしで歯科や医療用として使用した場合、目的外の使用となるため、歯科(医療)用目的で検討する場合は、必ず下記のお問い合わせフォームまでご連絡ください。
Focus 6K
Focus 6Kは、インプラントや歯列矯正など、さまざまな歯科治療に対応する光造形3Dプリンターです。
本製品はLCD方式の光造形3Dプリンターで、6KモノクロLCDパネルを搭載。最大解像度5760×3600ピクセルのスペックで、高精度なプリントを実現します。
最大造形サイズは197×122×200mmと、歯科用模型のバッチ生産に適した大きさです。Z軸に使用しているデュアルリニアガイドレールとボールねじは工業用の製品を採用し、正確な操作が可能に。造形物の積層痕を極力少なくした造形を行えます。
プラットフォームはワンタッチの固定で、取り外しや取り付けが簡単。アルミニウム素材で安定性と耐久性に優れているのもポイントです。
レジントレイはレジンを注ぎやすい設計のほか、ワンタッチロックで分解・設置が簡単。FEPフィルムの交換もスムーズです。材料は他社製レジンを含む、幅広い歯科用レジンに対応します。
スライサーソフトは歯科用の「FlashDental」を採用。歯科治療の3Dモデルをセッティングするのに便利な機能を搭載し、3Dプリントまでの工程を簡素化します。本体は、操作パネルに7インチタッチスクリーンを使用しているため、操作性も良好です。
<Focus 6Kのスペック表>
プリント方式 | 光造形方式(LCD) |
最大造形サイズ | 197 × 122 × 200mm |
積層ピッチ | 0.025-0.2mm |
XY軸精度 | 0.035mm |
プリント速度 | 10-50mm/h |
光源 | 405nm |
LCDパネル | 9.25インチ 6K工業用モノクロパネル |
Z軸 | 工業用デュアルリニアガイドレール、ボールねじ |
プラットフォーム | サンドブラストプラットフォーム |
保証 | 1年 |
本体サイズ | 390 × 330 × 525mm |
レジントレイ | 0.5L |
タッチパネル | 7インチフルカラー |
スライサー | FlashDental(日本語対応予定) |
本体重量 | 22kg |
通信方式 | Wi-Fi、USBメモリ、イーサネット |
対応データ形式 | fdp、stl、obj、3mf、slc、svgx |
言語 | 日本語、中国語、英語 |
付属品 | 金属ヘラ、プラスチックヘラ、フィルター、ゴム手袋、USBメモリ、レンチセット |
歯科用3Dプリンターに関するよくある質問
ここまでで、歯科用3Dプリンターの基礎知識やチェックポイント、FLASHFORGE社のおすすめモデルについて解説しました。最後に歯科用3Dプリンターでよくある質問についてご紹介します。
歯科用3Dプリンターの本体以外に必要なモノは?
歯科用3Dプリンターの本体以外に必要なモノは以下の通りです。
- CADソフト、スライスソフト
- 材料や洗浄液などの消耗品
- UVライト、口腔内3Dスキャナーなどの機材
3Dプリンターを扱うには、模型のベースとなる3Dデータが必要です。歯科医療の場合は、口腔内スキャナーを用いて3Dデータを取得する方法がありますが、CADソフトによる編集も行わなければなりません。3DデータはCADソフトから直接機器へ送るのではなく、3Dプリンターへの配置などを設定するためのスライスソフトも必要です。
模型を造形するにはレジンなどの材料も用意します。また、プラットフォームから造形物を剝がすためのスクレーパー、造形物の洗浄用容器などの備品、造形物を洗浄するための洗浄液や、機器をメンテナンスするための無水エタノール、ペーパータオルといった消耗品も必要になります。
光造形3Dプリンターでは、造形後に2次硬化を行うためにUVライトも必要です。これらの必要なモノ以外にも、持っておくと作業効率が良くなるアイテムもあります。詳しくは、レジン造形時に必要な道具について解説したこちらの記事をご参考ください。
歯科用3Dプリンターを使用する上での注意点は?
歯科医療目的で3Dプリンターを使用する場合は、事前に販売店へ利用目的を相談し、了承を得るようにしてください。了承を得ていない状態で使用すると、訴訟に問われる可能性があり、機器のトラブルにも対応できない場合があります。材料についても、目的に合うモノや、適合する3Dプリンターにのみ使用するようにしてください。
また、歯科用3Dプリンターで多く採用されている光造形法の機器は、ゴム手袋などで手を保護した上で使用してください。光造形法では、材料にレジンを、洗浄液に有機溶剤を用いることから、素手で取り扱うのは危険です。
Focus 6Kはどのような用途で使えますか?
Focus 6Kは、歯科治療目的に特化した光造形方式3Dプリンターです。用途は、インプラント・サージカルガイド・ワックスパターン・リテーナー・パーシャルフレームワーク・歯列矯正などと幅広く対応します。
Focus 6Kの用途について詳細を知りたい方や、歯科治療の用途で3Dプリンターを検討している方は、ぜひお気軽に弊社までお問い合わせください。
歯科用途における3Dプリンターのメリットは?
歯科用途における3Dプリンターのメリットは以下の通りです。
- 造形の自由度が高いため、各患者に適応したオーダーメイドの歯科治療モデルを作成可能。
- 3Dデータを用意できれば、だれでも同じ品質で歯科治療モデルの作成が可能。
- 歯科治療モデル作成の工数を大幅に削減できる。
- 簡単な歯科治療モデルを3Dプリンターで作成できる分、付加価値の高い作業に取りかかれる。
まとめ
多くの歯科用3Dプリンターは、光造形方式のタイプが採用されています。光造形方式は、精度の高いモノだと数十ミクロン単位の精度で造形が可能。歯列模型で治療方法を確認したり、インプラント治療用にサージカルガイドを製作したりするのに役立ちます。
FLASHFORGEでは、歯科治療の用途に特化した、光造形3Dプリンター「Focus 6K」を取り扱っています。Focus 6Kは、6KモノクロLCDパネルの搭載により、歯科治療モデルに求められる高精度な造形を実現しています。機器の詳細について知りたい方は、ぜひお気軽にFLASHFORGEまでお問い合わせください。