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3Dプリンター
- 公開日:2021.10.6
- 更新日:2022.9.29
3Dプリンターとは?活用事例を交えて仕組みや使用方法について簡単に解説
3Dプリンターとは「情報から物質へ変換する装置」のことです。
日本では、数年前からテレビ・雑誌などで3Dプリンターが取り上げられるようになり、現在では3Dプリンターについて耳にする機会が増えてきています。
しかし、
「3Dプリンターとは一体、何ですか?」
と聞かれて、即座に説明できる人は少ないのではないでしょうか?
そこで、本記事では 3Dプリンターとは何なのか、仕組みや使用方法について解説し、最後に3Dプリンターの活用方法を紹介します。
最後まで記事を読むことで、3Dプリンターに関する基礎知識が把握でき、この知識を土台としてモノづくりにも活かせる内容となっていますので、ぜひご活用ください。
ページコンテンツ
3Dプリンターとは?|意味をおさらい
はじめに、3Dプリンターについて解説します。
3Dプリンターとは、3DCADや3DCGによる設計データを基に、樹脂や金属などの材料を一層一層積み重ねて、立体造形物を作製する装置です。
3Dプリンターを用いた手法は、造形メカニズムに起因して「積層造形」や「Additive Manufacturing(AM):付加製造」とも呼ばれます。
3Dプリンターは複数の造形方式に分けられますが、いずれの方法でも材料を一層一層積み重ねる基本的な原理は変わりません。
しかし液体樹脂に光を照射しながら硬化させる方式や、熱溶解させた樹脂を積み重ねる方式など、それぞれの積層方法によって特徴に違いがあります。
また造形方式が異なると、得られる造形物のクオリティにも大きな違いが生じるため、それぞれの特徴を把握することが重要です。
3Dプリンターの各造形方式の仕組み
3DプリンターはASTM F 42委員会によって、造形方式を各造形メカニズムによって、分類されます。
※ASTM F 42委員会とは、世界最大規模の団体である米国試験材料協会「ASTM」によって、3Dプリンターに関する規格を明確化するために設立された組織のことです。
例えば3Dプリンターの種類には、下記のものが挙げられます。
- 熱溶解積層方式(FDM/FFFFDM方式)
- 光造形方式(SLA方式)
- インクジェット方式(材料噴射法)
- 粉末焼結積層方式(SLS方式)
作製したい製品や造形物にあわせて、それぞれ適した造形方式を選ぶことが大切です。
各造形方式の原理やメリット・デメリットについて、それぞれ解説します。
熱溶解積層方式(FDM/FFF方式)
熱溶解積層方式はFDM(Fused Deposition Modeling)方式もしくはFFF(熱溶解積層法)とも呼ばれ、加熱されたノズルの中で溶かした材料を吐出しながら、材料を積み重ねる造形方式です。
造形材料として、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)やPLA(ポリ乳酸)が主に使用されます。
この方式を採用した低価格帯の機種は多く、個人ユーザーの間でも人気があります。
熱溶解積層方式のメリット・デメリットは、以下のとおりです。
メリット
- ABSやPLAなど、取り扱いやすく安全性の高い樹脂を用いられる
- 装置の操作性が高いため、初心者向けである
- 様々な樹脂を織り交ぜた印刷が可能なため、色のバリエーションが豊富
デメリット
- 表面の仕上がりが比較的粗い
- 積層時は一層ごとに冷却・硬化させる必要があるため、造形時間が長くなる
以上の特徴から熱溶解積層方式は、手軽に3Dプリンターを扱う用途に適しています。
光造形方式(SLA方式)
SLA(Stereolithography Apparatus)方式の光造形は、紫外線の照射で光硬化性の液体樹脂を硬化させ、一層ずつ積層していく造形方式です。
液体樹脂に照射する紫外線が点状のため、照射範囲が狭く細かいものでも容易に造形できます。
光造形方式(SLA方式)の特徴は、下記のとおりです。
メリット
- 微細な造形が可能で、表面の仕上がり精度が高い
- 点状の光で照射でき、ヘッドがずれることもないため、他の方式よりも寸法精度が高い
- 比較的に透明度の高い造形物が造形できる
デメリット
- 装置や樹脂が他の方式と比べて高価である
- 光照射の範囲が狭いため、面状に照射する方式に比べて時間がかかる
光造形方式について詳細に知りたい方は、関連記事を参考にしてください。
インクジェット方式(材料噴射法)
3Dプリンターのインクジェット方式は、液状の粒子を吹き付けて印刷する「紙のインクジェットプリンター」とは異なる造形方式です。
インクジェット方式の中でも材料噴射法は、インクの代わりに液状の光硬化性樹脂をヘッドから噴射して、紫外線照射によって樹脂を硬化させ積層を繰り返す造形方式です。
材料を吐出するインクジェットヘッドが複数搭載された装置を用いると、造形物の各部位に適した異種材料を組み合わせながら使用できます。
メリット
- 積層ピッチが薄いため、細かい造形をすることが可能
- 表面の仕上がりが滑らかであり、造形精度が高い
- 異種材料を組み合わせて造形できる
デメリット
- 造形後に直射日光に当て続けると、硬化して変形してしまう
- 造形物の空洞部にサポート材が必要であり、コストや手間がかかる
以上の特徴から、材料噴射法によるインクジェット方式は、フィギュア制作やデザイン確認などの屋内での用途に適しています。
粉末焼結積層方式(SLS方式)
粉末焼結積層方式は、レーザー光線を用いて材料粉末を直接照射し、焼結によって造形物を作製する造形方式です。
レーザー光線を選択的に照射する方式であるため、SLS(Selective Laser Sintering:選択的レーザー焼結)方式とも呼ばれています。
材料として最も使われているのはナイロンをはじめとした樹脂ですが、金属やセラミックなどの粉末も使用されています。
メリット
- 造形時に粉末を敷き詰めるため、サポート材が不要であり設計の自由度が高い
- 任意の箇所にレーザー光線を照射できるため、複雑な形状も造形可能
- 焼結を活かすことで、粉末を粒子レベルで結合するため高強度が得られる
デメリット
- 造形直後の表面は粗いので、研磨などの後加工が必要になる場合がある
- 造形後の粉末除去に時間がかかる
粉末焼結積層方式で作製した造形物は高強度であるため、少量多品種生産に適している造形方式です。
3Dプリンターの使用方法
3Dプリンターで何かモノを作ろうと思ったら、以下の4工程が必要になります。
- 3Dデータの作成
- セットアップ
- 3Dプリンターで出力する
- 後処理
3Dプリンターでモノを出力するためには、3Dデータの作成とセットアップの作業が必要です。その作業が終われば、3Dプリンターで出力していくのですが、造形物の形状によってはサポート材を入れる必要があるため、後処理作業をしないといけません。
ここでは、この4工程について詳しく解説していきます。
1.3Dデータの作成
3Dプリンターでモノを作る際、3Dデータの事前準備が必要になります。
しかし3Dデータさえあれば、いつでも造形できることがメリットです。
3Dデータは図面上の二次元データではなく、三次元のデータです。そのため、データ設計は専用ソフトなどを活用すると良いでしょう。
具体的な3Dデータの作成方法は、以下の3通りです。
- 3D CADソフトもしくは3D CGソフトを使って3Dデータを作成する
- 3Dスキャナーを使って3Dデータを取得する
- 3Dデータの共有サイトから3Dデータをダウンロードする
3D CADソフトや3D CGソフトを使用する場合、3Dデータを手作業で設計するため知識の習得が必要ですが、自由にデータを設計できます。
一方、3Dスキャナーでモデルとなる対象物をスキャンし、簡単に3Dデータを取得する方法もあります。
また、インターネット上に入手したいデータがあれば、安全性を確認したうえでダウンロードするのも有効です。
2.セットアップ
3Dデータを作成した後、3Dプリンターが読み取れるファイル形式への変換が必要です。
このとき専用ソフトを用いて、一般的な3Dプリンターに対応している「STL(Stereolithography)データ」に変換します。
STLデータでは、3Dデータが非常に細かい三角形で構成されるため、曲面でも滑らかに表現できます。
STLデータが得られたら、移動速度やスライス間隔など、実際に造形する際の条件設定を行いましょう。
最後にデータを3Dプリンターに転送したら、出力する準備は完了です。
3.3Dプリンターで出力する
各造形方式の3Dプリンターの手順に沿って、造形をスタートさせます。
ただし、造形物の形状によってはサポート材が必要です。
例えばY字やT字の形状「オーバーハング」を作製する場合、造形ステージとの隙間ができるため、造形物が造形中に崩れ落ちる可能性があります。
そのため造形物を支えられるように、必要な箇所にサポート材を付けると良いでしょう。
造形をスタートしたら、はじめの数層分は造形トラブルが起きていないことを確認し、造形が完了するのを待ちます。
4.後処理
造形が完了したらヘラなどを用いて、造形物を引きはがします。造形物によっては品質を保つために、乾燥や冷却の必要があるので注意しましょう。
サポート材を付けた場合は、次のいずれかの方法でサポート材を除去します。
- 物理的に除去する
- 溶解液を使用する
1つ目は、工具を使用して物理的に除去する方法。特に高度な知識を必要とせず、簡単に作業できるメリットがあります。
しかし、複雑な形状や細かい箇所に付いているサポート材を除去しにくく、仕上がりが不十分になる可能性があります、
2つ目の方法は、サポート材に合った溶解液の使用です。サポート材を溶解液に溶かすことで、化学的に除去します。
使用する前に専門知識を習得し、溶解液の取り扱いに注意が必要です。
3Dプリンターの活用事例について
最後に3Dプリンターの活用事例についてご紹介します。
3Dプリンターはこれまでは製品化するための試作として、活用されてきましたが、現在はそれだけではありません。
最終製品として活用される場合も多くなり、製造業や建築産業をはじめ、様々な分野で3Dプリンターが活用されるようになりました。
3Dプリンターはモノを出力するアウトプット装置なので、これから技術が進歩していくと全ての分野で活用されるでしょう。
趣味ではなくビジネスで3Dプリンターを活用されたい方は参考になると思いますので、ぜひ一読ください。
試作
製造業において「試作」は、開発を進めていく上で必要な作業の一つです。
通常の試作作業は、実際にモノを作る必要があるためコストや時間、手間がかかります。
しかし3Dプリンターを用いた試作では、3Dデータ上でシミュレーションができるため、実際にモノを作る必要がありません。
そのためコストや時間、手間を大幅に抑えることが可能です。
製造業で具体的に活用されている分野は、次の3つがあります。
- 医療分野
- 航空宇宙分野
- 自動車業界
このほか3Dプリンターで試作するメリットは、こちらの記事で詳しく解説しています。
最終製品
製造業における従来の販売プロセスは、大量生産によってコストを抑えるという手法が取られていました。
しかし、3Dプリンターを使って最終製品を直接製造することが可能となったため、製造プロセスの短縮など、少量生産でもコスト削減が可能です。
その結果、現在3Dプリンターを使って最終製品を作る製造メーカーが増加しつつあります。
例えば、アメリカの航空機エンジンメーカー「GEアビエーション」は、エンジンに搭載する燃焼ノズルを3Dプリンターを用いて製造しています。
最終製品に3Dプリンターが活用される理由を詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
型
量産品の原型を作る際に用いる「型」は、従来は手作業で製造されてきました。そのため、人手が必要であり人件費などのコストがかかってしまいます。
そこで、3Dデータを基に製造可能な3Dプリンターを活用することで、コスト削減を図りながら型を制作可能です。
最終製品の形状に応じて型を設計するため、手作業では時間がかかりますが、3Dプリンターを利用することで時間の短縮にもつながります。
したがって、小ロット量産やリードタイム短縮などのメリットが得られる3Dプリンターを用いた製造は、型の製造に適しています。
治工具
治工具とは、加工や組み立てを補助するために使われる工具のこと。3Dプリンターを使用することで、短時間で高精度の工具を製造できます。
3Dプリンターで作製した治工具には、次のメリットが挙げられます。
- 3Dデータに修正を加えるだけで、治工具の形状を改善可能
- 治工具の軽量化を図れる
- 材料の切削工程が少なく、短時間で制作できる
治工具を販売するのではなく、自社の生産作業を効率化させるために使用する場合、小ロット生産が可能な3Dプリンターが適した製造方法です。
治工具作製の詳細はこちらの記事をご覧ください。
建築・建築模型
一般的に建築業界において、建築模型は主に壁や屋根といった面材・棒材を組み合わせて制作されます。
しかし、実際に材料を使用するため長い制作時間がかかってしまい、現在は3Dデータを自在に設計し、3Dプリンターで素早く出力する方法に注目が集まっています。
三次元モデルとして可視化できるうえ、3Dデータを修正するだけで簡単に設計変更が可能です。
さらに面材や棒材を使用することなく、3Dプリンターで出力するため、コストも削減できます。
建築業界の活用事例は、こちらの記事で解説しています。
ジュエリー
ジュエリーはこれまで手作業で作られてきましたが、近年では3Dプリンターが用いられるようになりました。
作り方は、まず3Dデータと3Dプリンターを用いてジュエリーの原型を制作。この原型に金属を流し込むことで、指輪やネックレスなどの完成品まで仕上げます。
3Dデータを用いてシミュレーションを繰り返せたり、試作作業もコストがかからなかったりと、メリットが大きいため3Dプリンターを使って製造されるケースが増えました。
3Dプリンターでジュエリーを作る方法は、こちらの記事をご覧ください。
3Dプリンターに関するよくある質問
3Dプリンターに関するよくある質問をご紹介します。
3Dデータを作成するにはどうすればいいですか?
3Dデータを作成する方法は、主に次の3つです。
- 3D CADソフトもしくは3DCGソフトを使って3Dデータを作成する
- 3Dスキャナーを使って3Dデータを取得する
- 3Dデータの共有サイトから3Dデータをダウンロード
3D CADソフトや3D CGソフトを使用する場合、手間がかかりますが自由にデータを設計できます。
一方で3Dスキャナーを用いると、簡単に3Dデータを取得できます。
また、インターネット上でデータをダウンロードする際は、安全性を確認したうえで実施すると良いでしょう。
家庭に3Dプリンターを導入できますか?
家庭でも3Dプリンターを導入できます。
3Dプリンターは家庭用で手軽に扱える機種と、製造業をはじめとして生産目的に使用する工業用の機種に分けられます。
FLASHFORGEでは、家庭用3Dプリンターから工業用プリンターまでラインナップが充実。3Dプリンターの導入を検討している方は、ぜひ製品一覧をご覧ください。
<<製品一覧はこちら!
まとめ
3Dプリンターは、3DCADや3DCGによる設計データを基に試作品を作製できる装置です。
試作から最終製品まで幅広く活用されており、製造業の新しい製造プロセスとして注目されています。
さらに工業用だけでなく、家庭でも手軽に導入できる家庭用3Dプリンターも普及しています。
FLASHFORGEは、家庭用3Dプリンターから工業用3Dプリンターまで取り揃えているので、導入を検討されている方は気軽にお問い合わせください。