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3Dプリンター
- 公開日:2022.3.8
- 更新日:2022.8.18
3Dプリンターで使える素材とは?種類と特徴を徹底解説します【対応表あり】
3Dプリンターに使われる素材にはそれぞれ特徴と向き・不向きがあり、作りたいものによって素材を使い分けることが大切です。とはいえ、3Dプリンターの素材にはさまざまな種類があるため、「何を選べばいいのか?」と迷ってしまうことでしょう。
そこで本記事では、3Dプリンターの素材ごとに特徴を徹底解説していきます。
最適な造形方式がわかる早見表も作成したので、3Dプリンターの素材選びに迷っている方、どのような素材があるか知りたい方はぜひ参考にしてください。
ページコンテンツ
3Dプリンターで使える素材
ABS
ABSは樹脂素材の一種で、3Dプリンターだけでなくさまざまな製品に使われている素材です。柔軟性に優れているので、造形後の表面塗装や研磨も行えます。電化製品の外装部品、フィギュアなど造形後の加工を必要とする場合は、まずABSを検討してみましょう。カラーバリエーションも豊富です。
対応している造形方式:熱溶解積層方式
ABSライク
ABSライクは紫外線に反応して硬化する樹脂素材です。名称の通り、ABSに似た性質を持ちますが強度としてはABSより劣ります。ABSとは違い光造形方式の3Dプリンターに対応しており、最終製品の機能やデザインを確認するためのプロトタイプ作成によく利用されています。
対応している造形方式:インクジェット方式、光造形方式
ASA
ASAは耐候性ABSとも呼ばれ、屋外用途の造形物に適した素材です。基本構造はABSと同じですが、ABSにアクリルゴムを加えることで耐候性をアップさせています。ABSと同じくカラーバリエーションが豊富なので、さまざまな造形物に適しています。
対応している造形方式:熱溶解積層方式
PC
PCはエンジニアリングプラスチックの1種であり、「ポリカーボネート」と言えば聞き覚えのある方も多いでしょう。透明性と自己消火性が高く、プラスチック素材の中では非常に高い耐衝撃性を持っています。高い透明性からメガネレンズなどにも使われています。
対応している造形方式:熱溶解積層方式
PC-ABS
PC-ABSは、ABSにPCを加えた素材です。自動車部品や電化製品に用いられるプラスチック製品に多く見られ、ABSの特徴に加えてPCの耐熱性と強度も備えています。主にエンジニアリング向けの素材なので、業務用3Dプリンターで使われることの多い素材でもあります。
対応している造形方式:熱溶解積層方式
PEIUltem
Ultemは非常にスペックの高い素材です。3Dプリンターの上位機種での造形を可能とし、造形物はそのまま航空機部品などに使われています。スーパーエンジニアリング・プラスチックの一種であり、工業製品に適した素材です。
対応している造形方式:熱溶解積層方式
PETG
PETGはペットボトル製品によく使われているポリエチレンテレフタレート(PET)を改質した素材です。PETよりも耐久性、耐衝撃性、透明性に優れており透明な肉厚造形物によく使われています。PETで肉厚造形物を作ると冷却速度の関係から結晶ができやすいため、透明性を上げたい場合はPETGが適しています。
対応している造形方式:熱溶解積層方式
PLA
PLAはトウモロコシやじゃがいもなどに含まれるデンプン質から作られる、天然由来の素材です。石油由来のABSよりも安定性が高く、熱収縮を起こしにくいので家庭用3Dプリンターでも扱いやすい素材でもあります。ただし、造形後の塗装や研磨が難しいのが難点です。
対応している造形方式:熱溶解積層方式
PP
PPはポリプロピレンのことであり、さまざまなプラスチック製品に使われている素材です。耐熱性に優れているためジップロックなどの耐熱製品によく使われています。また、安価素材なのでおもちゃなどの大量生産品にも向いており、酸やアルカリへの耐久性もある素材です。
対応している造形方式:熱溶解積層方式、粉末焼結方式
PPライク
PPライクは物性をPPに似せて作られた素材です。PPのような色合いを持ちながら、耐久性や耐衝撃性にも優れており割れにくいという特徴もあります。繊細な3Dプリンターで使用可能な素材の中では、高い柔軟性と強度を持ちます。
対応している造形方式:インクジェット方式、光造形方式
TPU
TPUはポリウレタン樹脂の一種で、ABSのような質感を持ちながらゴムのような柔軟性も持ち合わせています。スマートフォンカバーやスニーカーのソール部分などに適した素材です。また、安定した押出しが可能なダイレクト式の3Dプリンター、素材を引き出すためのフィーダーが複数備わった3Dプリンターでの使用に適しています。
対応している造形方式:熱溶解積層方式
ゴムライク
ゴムのような弾性を持つ樹脂素材をゴムライクと呼びます。柔軟性を必要とする造形物に適しており、ABSなど硬質なアクリル樹脂と混ぜることで弾性を調整できるのが特徴です。弾力のあるゴム部品を作りたいときに最適です。
対応している造形方式:インクジェット方式、光造形方式
チタン
チタンは自動車などの金属部品、ジュエリーなど幅広く使われている金属素材です。家庭用3Dプリンターでの扱いは難しく、主に工業用3Dプリンターで使われています。鉄より軽く、鋼と同等の強度を持つので精密機器などの金属部品に適しています。
対応している造形方式:粉末焼結積層方式
ナイロン6
ナイロン6はエンジニアリングプラスチックの1種です。耐熱性に優れており、-20~140℃においても形状変化しません(メーカーにより差があります)。あらゆる面で優れているので自動車部品にも使われています。ただし、酸やアルカリなどの耐薬品性は低い方です。
対応している造形方式:粉末焼結積層方式
ナイロン11
ナイロン11はエンジニアリングプラスチックの1種です。海水に対する耐久性に優れており、長時間使っても性能劣化がほとんどありません。水槽や新生児保育器などにも使われており、柔軟性にも富んでいるため大型部品の製造に適しています。
対応している造形方式:粉末焼結積層方式
ナイロン12
ナイロン12はエンジニアリングプラスチックの1種です。ナイロン6やナイロン11と比べて安価な素材なので、機械部品に使われています。安価ですが他のナイロンよりも耐衝撃性に優れており、バネ機構やリブ構造のある造形物に適しています。
対応している造形方式:粉末焼結積層方式
レジン
レジンは紫外線を当てることで硬化する液体樹脂です。適度な硬度があり、カラーバリエーションが豊富なのでフィギュアやアクセサリーなどの造形物を作る際によく使われています。紫外線の熱によって有毒な蒸気が発生することがあるので、使用時は換気に注意してください。
対応している造形方式:インクジェット方式、光造形方式
ワックス
ワックスは、ロストワックス精密鋳造などの製造工程で使われる素材です。高熱で融解するため、ワックスで作った方にセラミックをコーティングして内部のワックスを融解させ、そこで完成したセラミック型に金属を流し込み鋳造するなどの用途で使われています。
対応している造形方式:インクジェット方式
石膏
石膏を用いた素材は耐衝撃性は低いものの、表面に細かい凹凸があるため塗装に優れています。造形しながら塗装も行える3Dプリンターも存在し、製品の外観評価や模型製作によく使われています。粉塵による健康被害が起こらないよう、対策を施した上での造形に注意してください。
対応している造形方式:インクジェット粉末積層方式
光硬化性アクリル樹脂
光硬化性アクリル樹脂は紫外線を当てることで硬化する液体素材です。素早く正確な造形を得意とする素材ですが、耐久性や耐衝撃性には優れていません。長期的に使用する部品には適していないので、継続的に衝撃を受けるような部品での採用は避けましょう。
対応している造形方式:光造形方式
木材フィラメント
木材フィラメントはPLAに木材粉末を配合した素材です。造形物の質感は木材というよりは「滑らかな土器」に近いものになるので、植木鉢などの造形に適しています。使用後はノズルに木材粉末が付着し、不具合の原因になるのでクリーニングを徹底しましょう。中には木材粉末を配合するのではなく、「PFAで木材調を表現しているもの」もあります。
対応している造形方式:熱溶解積層方式
3Dプリンター素材と造形方式対応表
本記事でご紹介している3Dプリンター素材と、各造形方式の対応表を作成しました。まずは購入・導入する予定の3Dプリンターの造形方式から、作成予定の造形物に適した素材を選んでいきましょう。
熱溶解積層方式 | インクジェット方式 | インクジェット粉末積層方式 | 光造形方式 | 粉末焼結積層方式 | |
---|---|---|---|---|---|
ABS | ○ | - | - | - | - |
ABSライク | - | - | ○ | ○ | - |
ASA | ○ | - | - | - | - |
ポリカーボネート | ○ | - | - | - | - |
PC-ABS | ○ | - | - | - | - |
PEI | ○ | - | - | - | - |
PETG | ○ | - | - | - | - |
PLA | ○ | - | - | - | - |
PP | ○ | - | - | - | ○ |
PPライク | - | - | ○ | ○ | - |
TPU | ○ | - | - | - | - |
ゴムライク | - | - | ○ | ○ | - |
チタン | - | - | - | - | ○ |
ナイロン6 | - | - | - | - | ○ |
ナイロン11 | - | - | - | - | ○ |
ナイロン12 | - | - | - | - | ○ |
レジン | - | - | ○ | ○ | - |
ワックス | - | ○ | - | - | - |
石膏 | - | - | ○ | - | - |
光硬化性アクリル樹脂 | - | - | - | ○ | - |
木材フィラメント | ○ | - | - | - | - |
3Dプリンターに欠かせないサポート材とは?
3Dプリンターを使って何かを造形する上で欠かせないのは、上記にご紹介した素材だけではありません。忘れてはいけないのが「サポート材」の存在です。
サポート材とは造形物の中で「空中に浮いている部分」を造形するにあたり、支え・土台とするための材料です。サポート材を使って支えながら造形することにより、完成品の歪みなどを防ぎ、元になったデザインデータにより近い造形物を作ることができます。
上記のイメージ画像では青い部分がサポート材にあたり、造形後にサポート材を取り除いて完成です。サポート材がなけえば歪みや崩壊の原因になるため、本記事でご紹介した素材と合わせて欠かせない存在なのです。
FLASHFORGEにて取り扱っている「HIPSフィラメント」は、3Dプリンター素材として最も使用率の高いABS向けのサポート材です。
HIPSフィラメントはリモネン(柑橘類の皮に含まれる精油成分)に漬けることで融解するため、リモネンが届く部分ならばサポート材を簡単に除去できます。一方、ABSはリモネンでは解けない素材なので、綺麗にサポート材を除去して造形物の形状をしっかりと保てるのが特徴です。
手で剥がすタイプのサポート材は細かい部分の除去が難しく、造形物を傷つける、あるいは造形物自体を破損してしまうリスクがあります。HIPSフィラメントなら安全にサポート材を除去できるので、ABSを使った造形物のサポート材としてご検討ください。
互換品素材を使った場合の故障は保証対象外なのでご注意を
3Dプリンターに使用する素材やサポート材は、一般的にメーカーが製造・販売している純正品を用います。その一方でより安価に入手可能な「互換品素材」を用いることも可能です。ただし、次のようなリスクがあるので注意してください。
- 互換品とはいえ純正品よりもトラブルにつながるリスクが高い
- 互換品を使った場合の故障は保証対象外になる
3Dプリンターは精密機械なので、ノズルの詰まりなどによって不具合が起きたり、故障する可能性のある製品です。純正品素材を使い、定期的にメンテナンスを行っていればそうしたトラブルが起きるリスクは低いのですが、互換品素材の場合はトラブルリスクが大きくなります。
さらに、互換品を使って3Dプリンターが故障した場合は保証対象外になり、高い修理費がかかるかもしれません。こうしたリスクを考慮すると、やはり純正品素材の使用をお勧めします。
3Dプリンターの素材でよくある質問
ここでは、3Dプリンターの素材について、よくある質問について回答します。
材料の安全性やニオイはどうか?
材料は、種類によって安全性やニオイが異なります。
安全性を重視するのであれば、熱溶解積層方式の3Dプリンターがおすすめです。熱溶解積層方式は材料が取り扱いやすく、素手で触れてもトラブルが少ないメリットがあります。ただし、熱溶解してすぐの材料は、高温で火傷の原因となるため、触らないように注意してください。
光造形方式で用いるレジンは、素手で触るとアレルギー反応や、皮膚のかぶれなどの危険性があるので、取り扱いに注意が必要です。素手で触れてしまった際は、すぐにレジンを拭き取って、石鹸などで洗い流してください。
ニオイに関しては、いずれの材料も3Dプリントの際に発生するので、十分に換気を行うようにしてください。
なるべくニオイを抑えたい方は、熱溶解積層方式のPLA素材を用いるのがおすすめです。PLAはトウモロコシなどに含まれるデンプン質から作られていて、他の材料に比べてニオイを軽減できます。
材料の強度はどれくらいある?
3Dプリンターの材料は、材料や出力方式の組み合わせにより強度が異なるので、詳細について知りたい方は、メーカーにお問い合わせください。
熱溶解積層方式で強度を求める場合は、ABS樹脂がおすすめです。ABS樹脂は、他の材質に比べて粘着性と強度に優れています。
まとめ
いかがでしょうか?今回は3Dプリンターで使われる素材の特徴と、サポート材について解説しました。素材・サポート材選びは、理想の造形物を作るために欠かせません。
まずは購入・導入予定の3Dプリンターに適した素材・サポート素材をピックアップし、その中から造形物に合った素材・サポート素材を選ぶようにしましょう。
また、安価に手に入る互換品素材は魅力的ですが、3Dプリンターの故障リスクが高まるので、基本的に純正品素材をご使用ください。
FLASHFORGEでは、純正品の素材を取り扱っているので、ぜひご検討ください。