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3Dプリンター
- 公開日:2021.12.15
- 更新日:2023.8.2
3Dプリンターで使用されるフィラメントの特徴と用途を徹底解説
今回は3Dプリンターによく用いられるフィラメントの特徴と利用用途をご紹介します。作りたいものをつくるためには、どのフィラメントを購入すべきか判断できるようになるため、参考にしてみてください。
またFLASHFORGEでは、2023年7月20日10時から2023年8月31日17時までセールを実施しています。3Dプリンターの部品・消耗品、フィラメントが10%OFFで購入できます。セール期間中にチェックしてみてください。
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3Dプリンターによく用いられるフィラメントとは?
3Dプリンターに用いられる材料は大きく分けて7種類に分類されます。
・プラスチック
・木材
・コンクリート
・セラミックス
・食品
・細胞
・金属
この7種類の中で、3Dプリンター用の材料として最も使用されているのはプラスチックです。
そのプラスチックの中でも、「熱可塑性樹脂」と「熱硬化性樹脂」の2種類に大別できます。
熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂は、言わばチーズと卵のような関係だと捉えるとわかりやすいです。
チーズは最初は固体ですが、加熱すると液体になります。再び冷やすと、固体に戻り、再び加熱すると液体になります。そのため、再利用しやすい性質があります。
これが熱可塑性樹脂の特性です。
その反面、卵は最初は液体で、加熱すると固体になりますが、再び冷やしても液体には戻ることがありません。
これが熱硬化性樹脂の特性です。
したがって、熱硬化性樹脂は熱可塑性樹脂よりも再利用しにくいです。
近年、家庭用向けに普及しているFFF方式(熱溶解積層法)3Dプリンターに用いられる材料は熱可塑性樹脂が主流です。
その形状は細長い線状の500gもしくは1kg程度のスプール(巻き筒)状に巻かれており、それらをフィラメントと呼んでいます。
FFF(熱溶解積層法)方式3Dプリンターは名称にもある通り、フィラメントを材料として造形物を作成していきます。
3Dプリンター用材料の性質や特徴をご紹介
フィラメントは様々な種類があります。
ここでは、FFF方式(熱溶解積層法)3Dプリンターでよく使われる素材であるPLA、ABS、PETGを初め、エンジニアリングプラスチックやフレキシブルフィラメントについてもご紹介いたします。
PLA樹脂
PLA樹脂は、「ポリ乳酸」とも呼ばれる樹脂材料です。トウモロコシやジャガイモなどの農産物を原料とし、最終的に二酸化炭素と水に分解されることから環境に優しい材料として注目を集めています。
PLA樹脂のメリットは、造形中のニオイが少なく、熱収縮がABS樹脂に比べて少ない点にあります。扱いやすい材料で初心者でも安心して使えるほか、大きめの造形物を3Dプリントするのにおすすめ。熱溶解積層方式のオーソドックスな素材で、ABSと同様に価格がリーズナブルです。
ただしABS樹脂に比べて強度や熱に弱いデメリットがあります。
FLASHFOGEでは、独自開発しているPLAフィラメントを多くラインナップしており、用途に応じた種類を選択できます。ラインナップの内容は以下の通りです。
- MODERA:PLA
- PLA シルクフィラメント
- PLA 木質フィラメント
- PLA ギャラクシーフィラメント
- PLA 蓄光フィラメント
MODERA:PLAは、従来のPLAフィラメントに比べて、造形物のキレイさ、研磨のしやすさに優れているのが特徴です。また、スライス設定が簡単かつ、熱収縮も少ないので、簡単にプリントできます。質感はマット(無光沢)に近い見た目です。MODERA:PLAはYouTubeでも紹介しているので、ぜひ以下のリンクからチェックしてみてください。
シルク・木質のフィラメントは、それぞれシルクや木質などの質感を出したいときにおすすめです。
ギャラクシーフィラメントは、マット仕様かつアルミチップの配合により、造形物に光が当たることで、光が反射してキレイな外観が得られます。
蓄光フィラメントは、PLA樹脂に蓄光素材を配合し、光反射を止めて発光するのが特徴です。
ABS樹脂
ABS樹脂は、A(アクリロニトリル)、B(ブタジエン)、S(ポリスチレン)の3種類の成分を組み合わせた材料です。
アクリロニトリルは耐熱性や機械的強度、ブタジエンはゴム特性や耐衝撃性、ポリスチレンは加工性などに優れた特性を有しています。ABS樹脂はこれらの特性を合わせ持っているので、造形物に強度をもたせたい場合におすすめ。主に日用品や雑貨などの造形に適しています。
また、サンドペーパーや紙やすりでの後加工や、プラスチック用塗料などを用いた塗装がしやすいのも特徴です。メリットが多くて扱いやすく、材料費が比較的安いのも嬉しいポイントです。
一方で熱収縮率が高く、造形物の形状などによっては反りが発生していまいます。
PETG樹脂
PETG樹脂は、「ポリエチレンテレフタレートグリコール変性」と呼ばれる、ペットボトルに採用されている材料を改良したモノを指します。
PETG樹脂は衛生面や耐熱性に優れているため、生活用品のプリントにおすすめ。靭性と強度が求められる造形物にもぴったりです。
また、透明性も良好で、ランプシェードなどの造形にも活用できます。プリントした模型は、削る・切る・穴を開けるなどの加工も可能です。
一方で、プリント温度は高めかつ、適切な温度調節が難しいため、ノズルから押し出すフィラメントが糸引きしたり、フィラメントが押し出しにくくなるなどのケースがあります。
PETG材料に似たモノとして、PETG-CFもあります。PETG-CFは、PETGに炭素繊維を配合した材料で、より引張強度や曲げ強度を向上しています。炭素繊維により積層痕も目立ちにくく、仕上がりをキレイにしたい方におすすめです。
TPE樹脂
TPE樹脂は、「熱可塑性エラストマー」とも呼ばれている、ゴムのような弾性を有しているプラスチック材料のことを指します。人体への安全性が確認されている材料で、医療分野でも利用されているほどです。
TPE樹脂を使った造形物は柔らかく、触り心地も良好。また、伸び率がよく、積層強度が高いのも特徴です。
ただし、他のフィラメントに比べて価格が高い傾向にあります。
PPGW樹脂
PPGW樹脂は、PP(ポリプロピレン)にグラスウールを配合した材料を指します。
ポリプロピレンは、多くのプラスチック製品で採用されている代表的な汎用性樹脂です。しかし収縮率が大きいため、フィラメントとしての利用は難しいとされていました。そこで、PPにグラスウールを配合し、収縮率を大幅に低減することで、3Dプリントを可能にしています。
PPGW樹脂は、寸法安定性・積層密着性・表面平滑性に優れているほか、PPの特性である耐薬品性(酸・アルカリ・鉱物油など)・耐熱性(120℃20分のオートクレーブクリア)・加工性も備えています。また、一般的な塗装やメッキも可能です。
PPGWを用いて造形する際は、プラットフォームにPPフィラメント専用のビルドシートを貼り、表面を脱脂する必要があります。また、ビルドシートにPPGW樹脂をしっかりと定着させるために、水平出し、Z軸キャリブレーションの実施を推奨しています。
SMP樹脂
SMP樹脂は、「形状記憶ポリマー」とも呼ばれる材料を指します。
造形物をお湯などで55℃以上に温めると柔らかくなり、形状を変更できます。形状は一度変更しても、再び温めることで造形した時の形状に復元できます。
従来のフィラメントは、一度造形したあとに形状を変更できませんが、SMPのフィラメントを用いれば、造形後でも形状を変化させられます。
SMP樹脂はそのほかにも、生体適合性、層間強度が高い、印刷時のニオイや収縮が少ないなどの特徴があります。生体適合性があることで、ギブスのような肌に触れる部分の造形物をプリントすることも可能です。
注意点として、層間強度が高いことから、サポート材やラフトが剥がれない場合があります。また、温めて形状変化させる際は、火傷しないように注意してください。
ASA樹脂
ASA樹脂は、ABSのB(ブタジエン)の代わりに、弾性のあるA(アクリルゴム)を使用した材料です。これにより、ABSと同程度の機械的強度や加工性に加えて、優れた耐候性を有しています。
ただし、反りもABSと同様に発生しやすいため、使用の際はプラットフォームにスティックのりを塗って、材料が剥がれないようにしてください。ノズルの温度も、他のフィラメントに比べて高くする必要があるので、3Dプリンターの設定とフィラメントの仕様をよく確認しておきましょう。
また、用途についてですが、有機溶剤・アルコール・鉱物油・強酸・強アルカリに触れる場所には推奨しません。
エンジニアリングプラスチック
PC樹脂
PC樹脂は、エンジニアリングプラスチック材料である「ポリカーボネート」のことを指します。衝撃耐久性・耐候性・自己消火性・透明性など、さまざまな特性を有しているのが特徴です。
PC樹脂は、ABS樹脂のように造形後に研磨や塗装をするのにもぴったり。熱に強く、屋外でも使いやすいことから、工業製品パーツや治具に採用されることの多い材料です。
PC樹脂は造形物を研磨することで、熱溶解積層方式特有の積層痕が目立ちにくくなり、優れた透明性を発揮します。
一方で、他の材料に比べて温度設定を高くしなければなりません。また、反りやすい材料のため、造形がやや難しい傾向にあります。安定した造形を行うためにも、プラットフォームに専用のシートやスティックのりを使うなどの工夫が必要です。
PA樹脂
PA樹脂は、「ポリアミド(ナイロン)」と呼ばれるエンジニアリングプラスチック材料のことを指します。
耐衝撃性・耐油性・耐薬品性などに優れているため、剛性が求められるモデルや、最終製品や部品などの用途におすすめです。
靭性が高く、耐衝撃性は一般的なPLAの10倍以上、破壊伸び率は50倍以上の性能を有しています。そのほかにも、光沢度がよい、100℃条件で長時間使用できる、プリント温度の対応幅が広いなどの特徴があります。
ただし、造形前の材料は湿度に弱く、フィラメントの使用前と使用後は乾燥箱で保管して湿気を取る必要があります。
フレキシブルフィラメント
PBAT樹脂
PBAT樹脂は、「ポリブチレンアジペートテレフタレート」とも呼ばれる材料です。プラスチックの機能や物性に加えて、二酸化炭素と水に分解する性質を持つ、生分解性プラスチックの一種で、食品包装材や農業用フィルムなどで活用されています。
PBAT樹脂はTPUのような柔軟性があり、造形物はわずかに光沢が得られます。積層方向や造形物の充填率を調整すれば、柔らかさを変えられます。また、優れた耐衝撃性や弾性を有しているので、滑り止めやグリップなどの造形が可能です。
ただし、分解できる材料のため、造形物を屋外で使用したり、長期間使用したりする用途には不向きです。
TPU樹脂
TPU樹脂は、「熱可塑性ポリウレタン」とも呼ばれる、ゴム系(エラストマー)の材料です。
弾力性や柔軟性に優れているのが特徴で、柔軟性が求められる工業製品のホースやカバーなどに採用されています。
TPU樹脂のフィラメントは、弾力性や柔軟性の特性を活かした試作品やパーツをプリントするのにおすすめです。また、高い衝撃吸収性も有しており、グリップなどの用途にも活用できます。積層の仕方や内部の充填率を変えることで、柔らかさの調整も可能です。
一方で、TPU樹脂はプラットフォームへの定着が難しく、反りやすいことから、造形が難しい傾向にあります。
3Dプリントを簡単にするサポート材
サポート材とは、3Dプリントする際に、モデルを支える材料のことです。
T字やY字など造形中に宙に浮く部分がある場合、自重に耐え切れず、転倒してしまいます。
そのため、造型物を支えるためにサポート材を入れて、造形できるようにします。
積層が終わった後に、取り外すことで、モデルとサポート材を切り離すことができますが、取り外しにくいのがデメリットです。
そこで、サポート材を使用する場合は以下のような水に溶けやすい水溶性のフィラメントを使用します。
PVA樹脂
PVA樹脂は、「ポリビニルアルコール(ポバール)」のことで、別名「水溶性サポート材」と呼ばれる材料です。主にPLA樹脂の3Dモデルをプリントする際の、サポート材として使用します。
PVA樹脂は、常温の水に溶けるため、手作業ではサポートの除去が難しい場合の用途におすすめ。環境に優しい材料であるほか、プリント温度の範囲が広いのも特徴です。
HIPS樹脂
HIPS樹脂は、「耐衝撃性ポリスチレン」のことで、主にABS樹脂向けのサポート材として使用する材料です。
HIPS樹脂は、柑橘類から取れる「リモネン」と呼ばれる溶剤を使用するとよく溶けます。一方でABS樹脂はリモネンで溶けません。この特性により、サポート材を除去する際にリモネンを使用して、サポート材のHIPS樹脂だけを溶かし、ABS樹脂の必要な造形物だけを取り出すことができます。
HIPS樹脂は、手作業ではサポート材の除去が難しい場合や、サポート材のなかに微細な構造が埋まっている場合におすすめです。
注意点として、リモネンは柑橘類の香りがするため、一度溶剤が付いたらニオイがしばらく取れなくなります。溶剤を処理する際は、窓際で行うか換気した状態で処理するようにしてください。また、リモネンを保管するとき、HIPS樹脂を溶かすときは、容器で密閉しておく必要があります。
品質が高いフィラメントの見分け方
品質の高い造形物を作るには、品質の高いフィラメントを使用しないといけません。
ここでは、品質の優れたフィラメントの見分け方についてご紹介します。YouTubeでも品質が高いフィラメントの見分け方について解説していますので、ぜひご参考ください。
フィラメントの良し悪しの見極めは下記の3つをご確認ください
・均一な太さ
・不純物が少ない
・湿気対策が施されている
一つ目ですが、フィラメントの直径誤差は±0.2mm以上を超えると、均一にノズルから排出されず、太ければダマになり、細ければクラック(ひび割れ)が起こってしまいます。
そのため、径の誤差が±0.05mm以下のフィラメントを選択しましょう。(FLASHFORGEのフィラメントも径の誤差が±0.05mm以下になるように品質管理を徹底しています)
二つ目は、不純物です。
不純物が多く含まれているフィラメントを使用すると、表面に凹凸が発生しやすくなり、ノズルの根詰まりの原因となってしまいます。
そのため、不純物がなるべく少ないフィラメントを選ぶようにしましょう。
最後は湿気対策です。
フィラメントは湿気に弱いです。
湿気が含まれたフィラメントは剥がれやクラックが発生する原因となります。
そのため、フィラメントがアルミパックで保存されている、もしくは、吸湿を抑えるフィラーが含まれているものを選びましょう。
3Dプリンターのフィラメントに関するよくある質問
最後に、3Dプリンターのフィラメントに関するよくある質問について回答します。
フィラメントは純正品以外も使える?
「フィラメントは純正品(自社製品)以外でも使えるのか?」の質問について、ノズル・ヘッドの温度が対応していれば、純正品以外でも印刷は可能です。
しかし、メーカーの保証対象外(FLASHFORGEも同様)のため、自己責任での使用となります。加えて、品質の高いモデルを作りたいのであれば、自社の3Dプリンターに適した純正のフィラメントをおすすめします。
プリント中のニオイが気になる
熱溶解積層方式の3Dプリンターは、フィラメントを熱で溶かして造形を行うため、ニオイが発生します。プリントの際は、常に部屋を換気するようにしてください。
どうしてもニオイが気になる方は、悪臭の少ないPLAのフィラメントの利用がおすすめです。PLAは農産物由来の材料のため、他のフィラメントに比べてニオイが抑えられます。
フィラメントがプラットフォームに貼り付かない
3Dプリントの際、フィラメントがプラットフォームに貼り付かない場合は、ノズルとプラットフォームの距離調節が上手くできていない可能性があるので、キャリブレーションを再度行ってください。
キャリブレーションを行っても1層目の造形でフィラメントが剥がれしまうようなら、各3Dプリンター専用のビルドシートを利用する、スティックのりを塗布するなどして吸着力を高める方法もあります。
造形物が熱収縮による反りで剥がれるようなら、スライスソフトでブリムを付けておくと、造形物とプラットフォームの接地面が広くなり、剥がれにくくなります。
まとめ
3Dプリンターで使用される材料の性質と用途について解説しました。
造形物の良し悪しは出力する3Dプリンターだけでなく、材料にも依存します。そのため、材料選びは欠かせません。
この記事が材料選びの参考になれば幸いです。
また、FLASHFORGEは自社製のフィラメントを取り揃えています。
不純物が少なく、均一なフィラメントなので、品質の高い造形物が作成できます。
ぜひ、FLASHFORGE製のフィラメントもご検討ください。