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3Dプリンター
- 公開日:2022.6.30
- 更新日:2022.7.1
3Dプリンターで治具製作!活用が増える背景やメリットを解説
近年の急速なデジタル化によって、日本でも世界でも製品の製作にスピード感が求められるようになりました。しかし、日本の製造業の多くは高品質である一方でスピード感が足りないことから、世界での優位性や生産性も下がっているのが現状です。
そんな製造業の救世主といえる存在が3Dプリンターです。
1980年代ごろから開発が始まっていて、2010年代には製品化が進み、2020年代に入ってからは製造業に不可欠なものになりつつあります。
今、3Dプリンターで治具製作を行う現場は増えています。
しかし、未だに3Dプリンターを導入している企業は少ないことから、疑問もあるのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、3Dプリンターで治具製作が行われる背景やメリットについてお話していきます。最後までご覧いただくことで、3Dプリンターへの理解が深まります。
ページコンテンツ
治具とは部品の固定や作業位置を指示するための装置
治具とは、作業位置を指示するためにある装置のことです。
加工するもの(ワークという)を固定するなど、加工を補助する役割があることから、「補助工具」と呼ばれることもあります。さまざまな製造現場で活用されているものであり、大きく分けて2種類の治具が存在しています。
- さまざまな形状をしたもの
- 工作機械にワークを固定するもの
加工内容にあわせて製作するため、量産販売はされていません。
治具の専門メーカーや生産技術部門や開発部門の技術者が、用途に合わせて1つ1つ設計・製作している場合がほとんどだからです。
では、どういった理由で3Dプリンターを活用した治具製作が行われているのか、次で詳しく説明します。
3Dプリンターでの治具製作が増える背景
近年の製造業では、「多品種小ロット化」が求められることが背景にあります。
多品種小ロットとは、多様な種類の製品を少しずつ作る生産方式のことです。機械工業の分野においては、広く採用されています。
従来の生産ラインでは、同じ商品を大量に作る生産方式の「少品種大量生産」が採用されてきました。品質が安定しやすい、コストが安い、製品の出来栄えが作業者のスキルに影響されにくいというメリットがあったからです。
しかし、製造業のグローバル化に加えて、日本国内でも顧客ニーズの多様化が進み、商品のライフサイクルが短くなっています。そうした背景に対応するために、多品種少ロット生産が主流になりつつあります。
そして、その多品種小ロット生産を行うのに最適なツールとして、3Ⅾプリンターを活用して治具を製作する現場が増えているのです。
次に、治具製作における具体的な課題をご紹介していきます。
高度化する治具製作の課題
近年、治具製作は急速に高度化していますが、製造現場で克服すべき課題は大きく3つあります。
- 治具の数や部品が増えている
- 寸法精度が高くなっている
- 品質の保証が要求される
順番に見ていきましょう。
課題①:治具の数や部品が増えている
多品種に対応しようとすると、治具や部品の数は増えてしまいます。
多品種小ロット生産は、顧客の要望を色濃く反映することから、複雑な形状の製品が求められることもあります。複雑な造形は、治具の数や部品が増加してしまうため、コスト的な問題が発生することから対応が難しくなってきました。
つまり、必要な治具や部品を必要なときに必要なだけ製作することが求められているのです。
課題②:寸法精度が高くなっている
近年では製品のコンパクト化や高密度化が進んでいるため、治具に求められる寸法精度も高くなってきているのが現状です。
しかし、多品種小ロット生産では治具の寸法精度を高めると費用が上がる割に多く生産できないことから、コストを回収できない問題があります。
今の製造現場では、従来では生み出せなかった寸法精度の高い治具を製作することが求められています。
課題③:品質の保証が要求されている
凝った形状のものなどデザインを重視した製品では、形状の保証や検査といった要求も高くなってしまいます。現場においても詳細かつ高精度な品質管理が求められ、治具にも品質保証が求められるのです。
治具にカメラやセンサーを取り付けたり、検査をしやすい形状に変化させたりするなどの配慮が求められています。
では、3Ⅾプリンターで治具を製作すると一体どのようなメリットがあるのか、見ていきましょう。
3Dプリンターで治具を作るメリット
3Dプリンターで治具製作を行う主なメリットは、以下の3つです。
- 製作期間やコストを削減できる
- 変更するときの対応が早い
- より高度な治具を製作できる
上から順番に見ていきましょう。
メリット①:製作期間やコストを削減できる
3Ⅾプリンターを治具製作に活用すると、製作期間やコストを削減できます。
従来の治具製作は、設計と製造現場が離れていると時間やコストがかかっていました。しかし、3Dプリンターを活用することで問題を解消することが可能です。
たとえば、設計が日本で製造現場が海外といった場合でも、治具の設計データを送信することで治具を製作することができます。しかも、日本から現物を送らなくても、現地で類似した材料を使えば送料やコストを削減することができます。
以上の理由から、製作時間やコストを削減するなら3Dプリンターを活用した治具製作をおすすめします。
メリット②:変更するときの対応が早い
治具の変更を早く行える点も、3Dプリンターを活用するメリットです。
3Dプリンターなら、データさえあれば簡単に変更することが可能だからです。
たとえば、従来の加工工程の場合は金型を起こして治具を製作する必要があり、切削においては変更を加えるのに手間も時間もかかっていました。しかし、3Dプリンターを活用すれば複雑な形状の治具であっても、問題なく変更することができます。
近年は治具の種類も増加傾向にあるため、3Dプリンターを活用すれば問題を解消することも可能です。
よって、素早く変更を加えるなら3Dプリンターを活用した治具製作をおすすめします。
メリット③:付加価値のある治具を製作できる
付加価値のある治具を製作できることも、3Dプリンターならではのメリットです。
3Dプリンターを活用すれば、治具に軽い素材を使用したり複雑な形状にしたりすることができるので、アイデアを形にしやすいといえます。
たとえば、軽い治具を作ると作業者の負担を減らせることからヒューマンエラーの軽減にもつながります。ほかにも、治具を持ちやすい形状にしたり角を丸くしたりするなどの改良を施せば、けがの防止にもなるのです。
付加価値のある治具を製作するのであれば、3Dプリンターの活用をおすすめします。
3Dプリンターで治具を作る手順
以下は、3Dプリンターで治具を作る手順の一例です。
- 現場調査・要望の確認
- 治具の設計
- 3Dデータの作成
- 治具製作
- 製造試運転
- 改善点の修正
- 製造スタート
3Dプリンターにおける治具製作は、3Dデータに不具合があっても変更を加えてすぐに再製作に取りかかることができます。従来の機械加工における治具製作では仕様書や図面を作成して点検や承認を経る必要があり、時間がかかってしまいます。
つまり、3Dプリンターを活用することで完成までの時間の節約にもつながるのです。
最後に、治具製作向け3Dプリンターに関するQ&Aを見ていきましょう。
治具製作向け3Dプリンターに関するQ&A
治具製作向け3Dプリンターに関連したよくある質問は、以下のとおりです。
- 治具の製作期間は?
- 治具製作3Dプリンターにはどんな製品がある?
上から順番に回答していきます。
治具の製作期間は?
3Dプリンターで治具を製作する場合は、最短で1日です。
従来の機械加工での治具製作は完了までに長い期間(1週間程度)を要していましたが、3Dプリンターなら製作中に不具合があった場合にデータを調整するだけで、すぐに再製作できます。
治具製作3Dプリンターにはどんな製品がある?
FLASHFORGEの治具製作向け3Dプリンターには、Guider2s(税込216,700円)があります。
Guider2s特徴は、造形サイズです。
造形サイズが大きいことから、あらゆる用途に対応しています。従来の3Dプリンターでは造形サイズが小さく治具を作るのに不向きな機種もありますが、Guider2sなら最大で「高さ300mm×幅280mm×奥行250mm」まで対応できます。
治具製品の量産化としては難しいですが、試作用途としては万能な機種です。なので、治具製作の試作やモックアップとして利用したい方は、ぜひご利用ください。
まとめ
今回の記事では、3Dプリンターで治具製作が行われる背景やメリットについてお話しました。
以下に、今回お伝えした内容をまとめました。
- 治具とは作業位置を指示するために存在する装置のこと
- 3Dプリンターで治具製作を行うのは、「多品種小ロット化」に対応するため
- 治具製作の課題には、治具の複雑化、寸法精度や保証の高度化などがある
- 3Dプリンターを活用すると、製作期間やコストを削減することができる
- 3Dプリンターによる治具製作は、従来の製作よりも大幅に時間を短縮できる
- 3Dプリンターを活用することで、最短1日で治具を製作できる
近年の製造業では、スピード感が求められます。
3Dプリンターの導入も例外ではなく、世界的には3Dプリンターの普及率が急速に高まっています。
<<【参考記事】3Dプリンターの世界市場規模と各業界の展望について
導入が遅れることで、優位性が失われる可能性もあります。国内はもちろんグローバル市場で製品を販売する場合にも、新しいアイデアをすぐに具現化する意味でも、いち早い業務用3Dプリンターの導入をおすすめします。
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