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3Dプリンター
- 公開日:2022.10.14
- 更新日:2023.1.18
光造形3Dプリンターの二次硬化|Foto8.9sを用いて手順や注意点を解説
今回は、FLASHFORGE製の光造形3Dプリンター「Foto8.9s」と材料の「水洗いレジン ホワイト」を使って、歯のモデルを造形します。ホワイトの水洗いレジンは、二次硬化後に黄ばんでしまいますが、1~2日ほど時間を置くことで、白色に戻る様子を確認したいと思います。
また、Foto8.9sの造形の手順や、造形物のサンプルを見てみたい方にもおすすめの内容になっていますので、ぜひ参考にしてみてください。
歯のモデルの制作過程は、こちらの動画でも解説しています。
ページコンテンツ
使用する3Dプリンターの紹介
はじめに今回の光造形で用いた、FLASHFORGEの3Dプリンター「Foto8.9s」についてご紹介します。
Foto8.9sは、LCDモノクロ4Kパネルの搭載により、高解像度・高速造形・高安定性を実現したモデルです。UVランプのムラが少なく、より高い精度で3Dモデルを造形します。
最大造形サイズは、192x120x200mmと、家庭用光造形3Dプリンターのなかでは広めの設計で、幅広い用途に使えます。また、Foto8.9sは造形における作業性のよさも特徴で、初心者でも簡単に扱えます。
こちらは、Foto8.9sで造形物が完成したところの図です。歯のモデルを安定して造形するために、サポート材が付いた状態になっています。サポート材は、プラットフォームから取り外し、洗浄や二次硬化の後処理を行ったあとに除去します。
・Foto8.9sの仕様
項目 | 詳細 |
---|---|
モデル名 | Foto8.9s(フォト8.9s) |
造形サイズ(最大) | W192 x D120 x H200mm |
本体サイズ | W305 x D264 x H490mm |
造形方式 | LCD(光造形法) |
LCDパネル | 4Kモノクロパネル |
プリント速度 | 10-50mm/h |
積層ピッチ | 0.025-0.2mm |
レジン | スタンダード、水洗い、ABSライク |
マニュアル | 日本語対応 |
メーカー保証 | 1年 |
販売価格 | 88,000円(税込96,800円) |
使用するレジン材料の紹介
今回使用するレジンは、FLASHFORGEで販売している、水洗いレジンのホワイトになります。
従来のレジンは、造形後にIPAなどのアルコールを用いて洗浄を行います。しかし水洗いレジンでは、硬化していない状態のレジンを水で洗い流すことが可能です。
IPAなどの洗浄液は、捨てるのに産業廃棄物に出す必要があるほか、引火性などの危険性を伴います。一方で、水洗いレジンの場合は洗浄液の廃棄の手間がなく、比較的安全で家庭でも扱いやすいのが特徴です。
水洗いレジンを廃棄する際は、洗い落としたレジンを容器に溜めて硬化させてから、各自治体のルールに従ってゴミ処理を行ってください。
FLASHFORGEでは、水洗いレジン以外にも、スタンダードレジンやABSライクレジンも取り扱っています。各種レジンの詳細について知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください。
<<レジン選びが重要!3Dプリンター(光造形方式)で綺麗に造形するポイント
光造形3Dプリンターを使用する際の注意点
光造形3Dプリンターを使用する際は、以下の点に注意してください。
- 防護マスクを着用する
- 十分に換気されている部屋で造形する
- 硬化前のレジンを素手で触らない
光造形3Dプリンターで使う材料のレジンは揮発性です。換気がされていない部屋だとガスを吸い込んでしまい、呼吸器や肌への悪影響のほかに、レジンアレルギーを引き起こす可能性があります。
これらのリスクを避けるためにも、部屋をしっかりと換気し、防護マスクも着用した状態で造形を行ってください。
また、硬化前のレジンを素手で触った場合も、肌荒れやレジンアレルギーなどのリスクを伴います。万が一レジンに触れてしまわないように、ゴム手袋を着用してから作業を行ってください。
光造形3Dプリンターの造形の手順
ここでは、ホワイトレジンを使って歯を造形をしたときの、手順について簡単に解説します。
STLデータをスライス
今回造形する歯の3Dデータを、3Dプリンターで造形できるようにスライスします。
STLとは、3Dデータの拡張子の一種で、3Dプリンターで出力するサイズや積層ピッチなどを設定するのに必要なデータとなります。
3Dデータを作成するには、3DCADや3DCGなどのソフトが必要です。作成の手間を省きたい方は、3Dスキャナーを利用したり、3Dデータのダウンロードサービスなどを利用したりといった方法もあります。
プリント前の設定
正しく造形できるようキャリブレーション(水平出し)を行います。キャリブレーションを行う際は、A4用紙1枚を準備します。Foto8.9sのキャリブレーションは、はじめに六角レンチを使い、プラットフォームにあるネジを緩めて、レジンタンクを取り外します。
用意していたA4用紙1枚を半分に折り、LCDパネルとプラットフォームに挟まる位置にセットします。
次に3Dプリンターのタッチパネルから「ツール」→「水平出し」→「ホーム」と操作。セットしたA4用紙が均等に抑えられるように調整を行い、ネジを固定します。
調整後はタッチパネルから「ツール」→「マニュアルモード」→「Zプラス」を操作して、A4用紙を取り出します。最後にネジがしっかりと固定できていることを確認できたら、キャリブレーションの完了です。
キャリブレーションが完了したあとは、取り外していたレジンタンクを本体に固定し、レジンを充填させます。※詳細な設定方法はFoto8.9sのマニュアルを参照してください。
3Dモデルの造形
3Dプリンター本体に、用意していたスライスデータをインポートして造形を始めます。今回は、USBメモリを使って3Dプリンターにデータを移しています。
造形の際は、紫外線をカットするためにも必ずカバーをかぶせてください。
造形後の後処理
造形ができたら、プラットフォームを筐体から取り出して、貼り付いている造形物を剝がします。造形物を剝がす作業は、Foto8.9sに付属しているスクレーパーを使うと便利です。
剝がした造形物は、硬化していないレジンが残っているため、オブジェクトウォッシュ(レジン洗浄剤)で洗浄します。洗浄は、IPAや水など、使用するレジンに合った方法で行ってください。
洗浄の際は、別途でブラシを用意しておくと、隙間に溜まったレジンを簡単に落とせます。
二次硬化から完成まで
洗浄したあとは、洗浄液を乾燥させてから、二次硬化を行います。二次硬化させたホワイトレジンは、徐々に黄ばんでしまいますが、そのあとに再び白色に戻ります。
上図は二次硬化させた歯の造形物が、黄ばんだ状態のモノと、白色に戻ったときのモノの比較画像です。二次硬化が完了したら、造形物に付いているサポート材を処理して完成です。
上図を見ると、Foto8.9sで造形したモデルは積層痕が目立ちにくく、表面精度の高い造形ができていることが分かります。
二次硬化の役割とは
二次硬化を施すことで、完全に硬化されていない箇所も硬化し、造形物の変形を抑えられます。また、本来のレジンの強度や耐久性を発揮するためにも二次硬化は必要です。
二次硬化を行う上での注意点として、造形物の洗浄後はしっかりと乾燥させるようにしてください。二次硬化に使用する機器は、3Dプリンター用の機器を用いると、ムラなく硬化させやすいですが、ネイル用のUVライトでも代用できます。
光造形3Dプリンターに関するよくある質問
最後に、光造形3Dプリンターに関するよくある質問について回答します。
レジンの正しい洗浄方法は?
レジンは使用する材料の種類によって洗浄方法に違いがあります。
洗浄液は、スタンダードレジンとABSレジンの場合、IPA・無水エタノール・オブジェクトウォッシュのいずれかを用いての洗浄が必須です。一方で水洗いレジンは、水道水・IPA・無水エタノール・オブジェクトウォッシュのいずれかで洗浄を行います。
洗浄方法については、超音波洗浄機を用いるのがおすすめです。超音波洗浄機を使うと、細かい凹凸や、空洞部分に溜まっているレジンを排出しやすくなります。
造形物が超音波洗浄機に入らないサイズの場合は、造形物が入る耐薬品性の強い容器に洗浄液を入れ、造形物に何度か洗浄液をかけたり、柔らかいブラシを使ったりしてレジンを取り除いてください。洗浄後は、造形物を通気性のよい場所に置いて、半日〜1日ほど自然乾燥、または市販の食器乾燥器などを用いて数時間ほど乾燥させます。
乾燥後は、造形物の各面に、波長405nmのUVランプを照射して二次硬化をしてください。
二次硬化は必要?
光造形3Dプリンターで造形する際は、二次硬化を必ず行ってください。
二次硬化をしなかった場合、造形物が変形しやすくなるほか、強度や耐久性など本来のレジンの特性を正しく発揮できません。
二次硬化を行う際は、乾燥した造形物の各面に、405nmの波長のUVランプを使用してください。3Dプリンター専用のUVランプがない場合でも、ネイル用UVライトで代用は可能です。ネイル用UVライトを用いる場合も、405nmの波長を有した機器を使用してください。
まとめ
今回は、光造形3Dプリンター「Foto8.9s」を使って、ホワイトレジンの歯を造形している様子をご紹介しました。
ホワイトレジンは、二次硬化後に黄ばんできますが、時間を置くことで白色に戻ります。白色で造形したいモノがあれば、ぜひFLASHFORGEのレジンを使ってみてください。
二次硬化については、光造形3Dプリンターを用いる上で必要な作業です。専用の二次硬化器でなくとも、ネイル用のUVライトで代用できますので、光造形を行う際は別途用意しておきましょう。
Foto8.9sの実機や、造形サンプルを確認したい方は、ぜひFLASHFORGEのショールームをご利用ください。ショールームは東京と大阪の2つのエリアで開催しております。ショールームのご予約は、以下のリンクから行えますので、ぜひチェックしてみてください。