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3Dプリンター
- 2022.3.30
金属3Dプリンターの基礎知識について解説!メリット・デメリットは?

今回の記事では、金属3Dプリンターのメリットやデメリット、金属3Dプリンターと切削加工の使い分けなどについて解説します。
近年では、一般的な樹脂材料を用いた3Dプリンターだけでなく、金属材料を用いる「金属3Dプリンター」も注目されつつあります。1層毎に造形していく3Dプリンターならではの製造方法により、切削加工や鋳造などでは難しい形状の製品にも対応することが可能です。
金属3Dプリンターは、航空宇宙産業や自動車産業などの分野で導入が進んでおり、従来よりも高い品質の製品を作るために活用されています。
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金属3Dプリンターとは
金属3Dプリンターとは、金属製の材料を使って、3DCADや3DCGでモデリングした3Dデータを造形する装置のことを指します。
3Dプリンターは、一般的にPLAやABSなどの樹脂から造形するタイプが多くラインナップされています。現在、樹脂素材を対象とした3Dプリンターは低価格のモデルも多くなり、導入している企業が増えつつあります。
一方で、金属3Dプリンターはチタン・アルミニウム・ステンレスなどの金属材料を用いて造形するタイプです。樹脂用の3Dプリンターに比べて、本体価格やランニングコストが高く、機械も大型なモデルが多いので、まだ導入している企業が少ないのが現状です。
3Dプリンターの基本的な仕組みとしては、専用のソフトで断面をスライスした3Dデータを作成し、1層ごとに金属材料を積み重ねる作業を繰り返し行うことで、3Dデータの製品を造形します。機械の種類により、細かな造形の方法に違いはあるものの、金属3Dプリンターも上記と同様の仕組みで造形を行います。金属3Dプリンターの代表的な造形方法は、以下の4つが挙げられます。
- パウダーベッド方式:敷き詰めた金属粉末にレーザーを照射して固める方式
- 指向性エネルギー堆積方式:金属粉末の噴出とレーザーの照射を同時に行い固めていく方式
- 熱溶解積層方式:溶かした材料を押し出して積み重ねていく方式
- バインダージェット方式:敷き詰めた金属粉末にバインダーを吹きつけて固める方式
このなかでもパウダーベッド方式は、金属3Dプリンターのなかでも採用されている機種が多い造形方法です。
金属3Dプリンターのメリット

ここでは金属3Dプリンターのメリットをご紹介します。金属3Dプリンターは、従来の切削や鋳造、鍛造などの金属加工技術にはないメリットを有しており、今後さらなる技術の発展に期待が寄せられています。
複雑な形状にも対応可能
金属3Dプリンターは複雑な形状にも対応が可能です。
例えば鋳造で金属製品を作る場合は、型のなかに溶かした金属を充填させなければならないため、肉厚をある程度まで盛る必要があります。切削においても、金属の塊から刃物を使って加工を施すため、形状が制限されてしまうものです。
金属3Dプリンターでは、1層ずつ金属材料を積み重ねて造形を行うため、他の製造方法に比べて、製品の形状が制限されにくいメリットがあります。また、他の方法では、複数の部品を組み合わせなければ作れない製品でも、金属3Dプリンターであれば一体で造形できる場合もあるので、部品点数の削減や軽量化が期待できます。
試作品や小ロット品の短納期製造
金属3Dプリンターは、試作品や小ロット品をいち早く製造できる点もメリットです。
鋳造や型鍛造などの場合は、ひとつの製品を作るために専用の金型を用意しなければなりません。これらの製造方法では、金型を作るための時間がかかってしまうほか、後加工も必要になる場合が多く、すぐに完成品を得るのは難しくなります。設計を変更する場合も、金型を改造するか、改めて作り直さなければならないので、試作品や小ロット品の製造には不向きです。
一方で金属3Dプリンターは、金型や治具工具を必要とせず、主に材料と製品の3Dデータがあれば造形できるので、短納期で試作品や小ロット品を用意できます。試作品を検証し、問題点が見つかったあとでも、3Dデータを編集してから再び造形するだけのため、かかる手間が少なく済みます。
また、3Dプリンターの造形スペースに収まる範囲であれば、複数の製品を一度の操作で造形できるため、複数の試作品をまとめて検証したい場合などにも便利です。
コストの削減により、気軽に試作品を製作できる
金属3Dプリンターは、試作品を作る場合、他の製造方法に比べて製造にかかるコストを削減しやすく、気軽に製作できるメリットがあります。
金属3Dプリンターは金型なしでも造形できるほか、治具や刃物などの工具も必要としません。従来の金属加工技術であれば、1つの製品を作るだけでも、これらの品物を用意しなければならなかったため、コストと時間が大きくかかってしまうものです。
金属3Dプリンターの場合は、主に材料のコストだけのほか、切削加工のように無駄になってしまう切粉の発生などもないので、材料費を抑えられます。一度造形を始めたら、基本的に機械が自動で作業を行うため、作業を行う時間や人員が少なく済むのもポイントです。
金属3Dプリンターのデメリット
次に金属3Dプリンターのデメリットをご紹介します。金属3Dプリンターのメリットを見ると、魅力的な要素が詰まっていますが、決して万能に使えるという訳ではありません。
大量生産に不向き
金属3Dプリンターは、試作品や小ロット品の製作に適している一方で、大量生産には不向きです。
金属3Dプリンターの造形は、機械にある造形台にて行われます。造形台のスペース内に収まる範囲であれば、複数の製品を一度に造形できます。
そのためサイズの小さな製品に関しては、ワンバッチで複数の製品を造形でき、ある程度の生産は見込めるものの、サイズの大きなモノの場合は、ワンバッチで1つの製品しか造形できないため、多くの製品を用意するには時間がかかってしまいます。
造形に関する知識が必要
金属3Dプリンターは、上手く造形するための専用の知識が必要です。
始めに3Dモデルのデータを用意するためには、3DCADや3DCGなどのソフトを扱う技術が必要になります。これまで2次元での製図しか行っていない方からすれば、3Dモデルのデータを作成するために、新しくソフトの使い方を覚えなければなりません。
3Dモデルのデータを3Dスキャナーから得る方法もありますが、取得した既存品のデータを編集する場合があるので、どちらにしても新しくソフトの使い方を覚える必要があります。
また、用意した3Dデータを3Dプリンターに送り込む際、造形台への配置方法の設定なども行います。配置の仕方によって造形の仕上がりに差が出るので、導入した3Dプリンターを上手く扱うためのコツを理解しなければなりません。
コストメリットの恩恵が得られない場合がある
金属3Dプリンターの造形するモノによっては、切削・鋳造・鍛造などの製造方法に比べて、コストが余計にかかってしまう場合があります。
金属3Dプリンターの本体価格と材料費は、樹脂3Dプリンターに比べて高い傾向にあり、導入後の費用対効果が得られるまでに長い期間を要する可能性があります。
簡単な形状の製品を作る場合においても、金属3Dプリンターで造形するより、切削加工などで製作したほうがスムーズなこともあるので注意が必要です。また、寸法精度が求められる製品については、金属3Dプリンターで造形したあとに加工をしなければならず、さらにコストがかかることもあります。
金属3Dプリンターに関するよくある質問

ここまでの解説で、金属3Dプリンターの基礎知識について、ある程度ご理解いただけたかと思います。最後に金属3Dプリンターに関する「よくある質問」について回答します。
金属3Dプリンターではどのような製品が作れる?
金属3Dプリンターは複雑な形状でも製造しやすく、金型も必要としないことから、従来の手法では難しかった製品の製造や、金属製品の試作品などに適しています。現在では、航空宇宙産業・自動車産業・医療などの最先端技術が求められるシーンで導入されつつあります。
例えば、これまで切削加工で製造していた部品を、解析ソフトで最適な構造に設計し、金属3Dプリンターで造形することで、部品の強度と軽量性を両立させたり、部品の組み合わせで出来ていた製品を一体で造形することで性能を向上したりといった使い方がされています。生産量の多い製品の場合は、直接完成品を作るのではなく、簡易金型を3Dプリンターで製作してから、生産を行うこともあります。
上記の用途のように、造形したい製品が金属製のモノであれば、金属3Dプリンターは便利です。一方で、新製品の意匠や構造のチェック、モックアップなどのように、金属素材でなくとも問題ない用途であれば、樹脂3Dプリンターでも対応できます。樹脂3Dプリンターは、金属3Dプリンターに比べて機械が小型かつ、本体価格がリーズナブルなモデルが多いため、導入のハードルが低い傾向にあります。そのため樹脂材料でも問題のない方は、一般的に多くラインナップされている熱溶解積層法方式や光造形方式の樹脂3Dプリンターも検討してみるとよいでしょう。
金属3Dプリンターと切削加工の使い分け方は?
マシニングセンターやNC旋盤などを用いる切削加工は、加工精度の高さや仕上げの種類が豊富にあるのがメリットです。作業工程が効率化されていれば、完成までにかかる時間も少なく済むでしょう。また、基本的に切削加工で対応できる形状であれば、金属3Dプリンターよりもコストを抑えられることも多いです。
しかし、切削加工は刃物を使って切削するため、複雑な形状の製品に対しては、刃物が入り込めず、加工ができません。また、金属の塊を削り出して製造するため、切粉として廃棄される材料が多いのもデメリットです。
複雑な形状で切削加工できない製品は、金属3Dプリンターなら対応できます。金属3Dプリンターは、専用の機械と材料、および3Dモデルのデータが必要ですが、切削加工では作れない形状でも対応できるのが強みです。
これらの内容から、使い分け方としては、マシニングセンターなどの工作機械で加工できるモノなら切削加工を、そうでない場合は金属3Dプリンターを用いて製造するとよいでしょう。
ただしロット数の多い製品の場合は、大量生産に適した鋳造や鍛造の選択肢も考慮する必要があります。切削加工と同様に、鋳造や鍛造で対応できない形状の場合は、ロット数の多い製品に対しても金属3Dプリンターの選択肢が入ります。
まとめ
今回は金属3Dプリンターの基礎知識について解説しました。金属3Dプリンターは、金属素材を使って造形するタイプの3Dプリンターを指します。これまでは、金属製品を作る場合、切削・鋳造・鍛造などが活用されていましたが、これらの手法では製造が難しい、複雑な形状の製品に対しては、金属3Dプリンターが活用されつつあります。
ただし、金属3Dプリンターはコストの面などから導入のハードルが高いこともあり、樹脂材料を用いる3Dプリンターと比べると、導入している企業は少ないのが現状です。
仮に、新製品の意匠や構造のチェックなど、金属素材でなくとも問題ない用途の場合は、樹脂3Dプリンターでも代用できるので、ぜひそちらも検討してみましょう。
FLASHFORGEでは、樹脂3Dプリンターである、FFF(熱溶解積層法)方式、DLP(光造形法)方式、LCD(光造形法)方式のモデルをラインナップしています。3Dプリンターの導入を検討している方は、ぜひ気軽にお問い合わせください。