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3Dプリンター
- 公開日:2022.4.11
- 更新日:2022.4.11
3Dプリンターにおけるシリコーン素材の活用方法やメリット・デメリットを解説
3Dプリンターは業務用から家庭用までさまざまな種類があり、製造業・建築業などのビジネスシーンではもちろん、趣味として3D造形を楽しむ方が増えています。
そんな3Dプリンターの中で今話題なのが「シリコーン素材を扱える製品」です。そこで本記事では、3Dプリンターにおけるシリコーン素材の活用方法や、メリット・デメリットなどを解説します。
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3Dプリンターでもシリコーン素材の造形ができる
3Dプリンターを詳しく知らない方からすれば「シリコーン素材が使えるのは当たり前なのでは?」という声が聞こえてきそうですね。
実は、シリコーン素材は扱いが難しく、3Dプリンターから直接造形できる機種は限られています。まずは、3Dプリンターでシリコーン素材を造形する方法をご紹介します。
2つの造形方法
シリコーン素材を使った造形では2つのパターンがあります。「3Dプリンターから直接造形する方法」と、「3Dプリンターで金型を造形してからシリコーン素材を射出する方法」です。2つの特徴をまとめてみました。
シリコーン素材を直接造形 | 金型にシリコーン素材を射出 | |
---|---|---|
メリット | 金型造形の手間がなく、最終部品にも採用できる。 | 一度金型を造形すれば同じ部品を量産できる。 |
デメリット | 造形に時間がかかる。 | 造形できる形状が限られる。 |
コスト | 専用3Dプリンターは非常に高額。 | 安価に造形できる。 |
実用性 | 登場したばかりで試行錯誤段階にある。 | 従来からある3Dプリンターを活用できるため実用的。 |
いずれも一長一短ありますが、実用性の面で言えば従来の3Dプリンターを使ったシリコーン素材の造形が数歩先を行っています。
3Dプリンターでシリコーン素材を使うメリット・デメリット
では、3Dプリンターでシリコーン素材を扱うとどのようなメリット・デメリットがあるのか。詳しく解説していきます。
シリコーン素材のメリット
3Dプリンターでシリコーン素材を直接造形すると、従来は金型成形品として製造していたものを3Dプリンターから作り出すことが可能です。金型成形品と同等のクオリティーを維持でき、最終部品に採用すれば金型コストを削減できるでしょう。
また、医療分野では1人ひとりの身体の形状に合わせてシリコーン医療器具を造形できるため、今まで以上に患者に寄り添った医療を実現できます。
シリコーン素材のデメリット
シリコーン素材を直接造形できる3Dプリンターは非常に高額です。
シリコーン素材を扱うにはLAM(液体積層造形方式)という、ドイツのInnovatiQ社(旧German RepRap社)が開発した L320という機種が有名です。3Dプリンターとして素晴らしい機種ですが、価格は1,000万円以上でなかなか手が出ません。
もう1つのデメリットは「高い透明性を実現できないこと」です。透明性の高さはシリコーン素材本来の特徴ですが、3Dプリンターでは1層ずつ熱して造形していくため、透明性を確保できません。透明性の高いシリコーン素材を使用しても、造形後は白く濁ったような色合いになってしまうのです。
シリコーン素材に関するよくある質問
3Dプリンターとシリコーン素材のメリット・デメリットについて解説したところで、よくある質問をご紹介します。
Q1. シリコーン素材で最終部品を作れますか?
最終部品のサイズが3Dプリンターで造形可能であれば、シリコーン素材を使った造形物を最終部品として使うこともできます。ただし、金型造形を行う場合は金型の内径でサイズを判断しなければいけません。例えば造形サイズの最大高さが400mmの3Dプリンターで、高さ400mmの最終部品は作れないのでご注意ください。
Q2. シリコーン素材に着色をして造形できますか?
シリコーン素材への着色した上での造形も可能です。効果前に着色すればカラー付きのシリコーン素材として造形できます。ただし、シリコーン素材の直接造形が可能な3Dプリンターにおいては、故障の原因になる可能性もあるためメーカーへの事前問い合わせが必要です。
Q3. シリコーン素材に替わる素材はありますか?
あります。3Dプリンター分野では、シリコーン素材の代替としてフィラメントがよく使用されています。シリコーン素材の特性に近い素材もあり、場合によっては最終部品としてもご活用いただけます。
フィラメントならシリコーン素材と同じことができる
一般的な3Dプリンターに使用される素材は、「フィラメント」と「レジン」という2つの種類に分けられます。レジンとは液体樹脂のことです。液体を積層していくため高精度な造形が可能ですが、材質やカラーバリエーションに制限があります。
一方フィラメントとは、樹脂を溶かした糸状にした素材です。フィラメントはさまざまな樹脂を合成することも可能なため、色や質感のバリエーションに富んでいます。フィラメントを使えば軟性・弾性に優れたものを造形でき、シリコーン素材に代わる素材として活用できます。
おすすめの3Dプリンターフィラメント
フィラメントにはさまざまな種類があり、シリコーン素材に似た特性を持つものがたくさんあります。今回はその中で、FLASHFORGE製のおすすめ3Dプリンターフィラメントをご紹介します。
FLASHFORGE フィラメント PETG 500g ナチュラル(透明性を求める方に)
PETGとは「ポリエチレンテレフタレート」のことであり、熱を加えると軟化し、成形しやすくなる熱可塑性(ねつかそせい)のポリエステルです。身近なところではペットボトルに使用されています。
PETGフィラメントは透明性、靭性、剛性、耐熱性に優れている大変強い素材です。ナチュラル色を使えばシリコーン素材以上に高い透明性を確保でき、造形物に透明性を求める方におすすめのフィラメントです。
FLASHFORGE フィラメント TPU(軟性) 500g ホワイト(軟性を求める方に)
軟性の高い商品の多くは、シリコーン素材かTPUを使用しています。TPUとは熱可塑性のポリウレタンであり、シリコーン素材のように軟性に優れているのが特徴です。厳密に言えばシリコーン素材の方が軟性は高いですが、よほどの軟性を求めない限りTPUフィラメントで代替できます。
また、TPUはシリコーン素材よりも滑らかな質感なので、上質さを出したい時にはTPUフィラメントがおすすめです。ただし耐熱性は高くないため、高温になるような部品には適しませんので注意してください。
TPE フィラメント 500g(より高いシリコーンらしさ、安全性を求める方に)
TPEとは熱可塑性エラストマーと呼ばれる素材です。聞き慣れない素材かもしれませんが、各種フィラメントの中で最もシリコーン素材に近い材質をしており、安全性にも優れています。
TPEフィラメントは刺激と毒性が低く、医療分野で使われていることからもその安全性はお墨付きです。たとえばマウスピースは大半がTPEを使用して作られています。安全性もさることながら軟性・弾性に優れ、質感は最もシリコーン素材に近いと言えるでしょう。
透明性は高くありませんが、透明性よりもシリコーン素材の質感を再現したいという方におすすめのフィラメントです。
まとめ
いかがでしょうか?本記事では3Dプリンターにおけるシリコーン素材の活用と、メリット・デメリットなどについてご紹介しました。3Dプリンターでシリコーン素材を直接造形できるのは画期的ですが、中堅・大企業でないとなかなか手が出ない金額です。
一方で、フィラメントを使用する「FFF(熱溶解積層)方式」の3Dプリンターなら高性能なものでも100万円未満で購入できます。フィラメントはシリコーン素材よりも安いため、ランニングコストも抑えられますね。
シリコーン素材を使った造形がしたい場合は、まずフィラメントで代替できないかを検討しましょう。どうしてもシリコーン素材を使用したい場合は、FFFか光造形方式の3Dプリンターを使って金型を造形し、シリコーン素材を射出して成形しましょう。