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3Dプリンター
- 公開日:2022.6.16
- 更新日:2022.9.21
3Dプリンターの世界市場規模と各業界の展望について
製造業界に限らず、さまざまな業界で活躍している3Dプリンター。日本でも用途の幅を広げるために、日々研究や新しい試みがされていますが、海外では日本よりも多くの用途で活用されているのが現状です。
それでは、3Dプリンターは世界市場で見るとどれだけの台数が出荷されているのでしょうか。この記事では、3Dプリンターの世界市場の出荷台数や、3Dプリンターが活用されている業界の紹介および展望について見てみましょう。
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3Dプリンター世界市場規模の概要
上図は、矢野経済研究所で公開されている、2021年の3Dプリンターの世界市場推移と予測の表です。
上図を見ると分かるように、2017〜2019年にかけては3Dプリンターの出荷台数は年々増加傾向にあります。2020年については、新型コロナウイルス感染症の影響により、前年比99.7%の36.4万台とやや減少しています。
2022年と2023年には、若干の増加が予測されていますが、新型コロナウイルス感染症の流行により、財務状況が厳しくなった企業が多いなどの理由から、状況は厳しいと予測されています。
3Dプリンター導入で得られるメリット
3Dプリンターを導入することで得られるメリットは、主に以下の3点です。
- コストの削減
- リードタイムの短縮
- 在庫管理の簡略化
ここでは、各メリットの詳細について順番に見てみましょう。
コストの削減
3Dプリンターを導入することで、さまざまなコストを削減できます。
例えば、外注で製品の加工や製作を行う場合には、外注への依頼費用や、依頼する手間でかかる人件費などのコストが発生します。しかし3Dプリンターを導入すると、自社で製造を行えるため、これらのコストがかかりません。
リードタイムの短縮
3Dプリンターを自社で扱うことで、リードタイム(商品の発注から納品に至るまでの時間)の短縮も期待できます。
外注を行った場合は、仕様について打ち合わせをしなければならないほか、運送に時間もかかります。また、外注先のスケジュールによっては納期に遅れがでる場合もあるでしょう。
一方で自社で3Dプリンターを用いれば、上記にかかる時間を削減できるため、開発期間や製作期間の短縮に繋がります。
在庫管理の簡略化
3Dプリンターの導入は、在庫管理がしやすくなるのもメリットです。
例えば製造現場の場合、生産品のパーツが故障したときのために、予備のパーツを在庫として持っておく必要がありました。しかし3Dプリンターがあれば、すぐに予備パーツを作り出せるため、在庫の管理が楽になります。
また、パーツの改良が必要になった場合でも、3Dデータを編集すれば3Dプリンターで対応できるので、改良前と改良後のパーツを保管しておく必要もありません。
3Dプリンターを活用している業界の展望
ここでは、3Dプリンターを活用している業界の紹介と、それぞれの展望について解説します。3Dプリンターを活用している主な業界は以下の通りです。
- 建築業界
- 医療業界
- 食品業界
- 自動車業界
- ファッション業界
- 教育業界
各業界では、どのようにして3Dプリンターが活用されているのか、詳しく見てみましょう。
建築業界
建築業界では3Dプリンターを用いた建築がされています。
使い方は主に2種類で、1つ目は建築用の3Dプリンターを導入している工場にて、分割した建築物の部材をプリントする方法です。プリントされた部材を建築現場に持ち込み、基礎の上に組み立てて施工します。
2つ目は大型の3Dプリンターを建築現場に用意してプリントする方法で、3Dプリンターで建造物をそのまま造形します。
これらの方法で建築を行うと、従来の手法に比べて職人の人数が少なく済むほか、施工にかかる時間も短縮できます。また、建築にかかるコストが少なく済むので、その分リーズナブルな価格で住宅を提供できると期待されています。
兵庫県西宮市の「セレンディクス株式会社」では、グランピングや別荘などを目的とした住宅をおよそ24時間で施工。価格も約300万円とリーズナブルな価格を実現しています。
建設業界での3Dプリンターの活用事例は下記リンクでご紹介していますので、ぜひご覧ください。
医療業界
3Dプリンターは造形の自由度の高さから、医療業界でも活用されています。
例えば、患者やその家族に対して病状や治療についての説明をする「インフォームドコンセント」や、手術前の打合せ材料として、精密な臓器や骨モデルの造形がされています。
また、義手や義足といったオーダーメイド品の製作にも3Dプリンターを用いることで、コストを削減できます。
大阪府吹田市にある国立循環器病研究センターでは、再生医療として心臓の中で血液の逆流を阻止するための「心臓弁」を代替できる「人工心臓弁」の開発研究も行われています。
研究が進めば、これまでは技術面や金額面で難しいとされていた治療も、容易に行えるようになるかもしれません。
参考記事:医療分野における3Dプリンターの活用例について解説
参考記事:歯科用3Dプリンターとは?導入前に見るべきポイントについても解説!
食品業界
3Dプリンターは樹脂や金属の材料を用いたモノが主流ですが、なかには「3Dフードプリンター」と呼ばれる食品を材料とした機種もあります。
3Dフードプリンターは、ペースト状にした食材を材料とし、熱溶解積層方式のように積層しながら食品を造形します。代表的な用途は介護食で、高齢者でも食べやすいように硬さを抑えた食品や栄養素の調整をした食品など、個人ごとに合わせた食品を提供できるようになります。
また、材料をペースト状にするので、野菜のくずや虫などの、見た目の問題で避けられてしまう食材でも活用がしやすくなり、食品ロスの低減も期待されています。
参考記事:食べ物を3Dプリンターで出力!3Dフードプリンターの特徴や用途とは?
自動車業界
自動車業界の大手企業は、3Dプリンターを導入することで、新しい取り組みや生産性の向上に役立てています。
ミシュランタイヤでは、バイオ素材やスチールなどのリサイクル材を使用したタイヤに切り替える施策で3Dプリンターを活用し、注目を浴びています。
フォルクスワーゲンでは、外部業者に委託していた治工具の製作を内製化するために3Dプリンターを導入し、開発費用と開発期間を大幅に削減することに成功しています。
3Dプリンターは、新技術のデモンストレーションを目的とした試作品や特殊部品の製造などに活用が可能です。自社で3Dプリンターを扱うことで、外注する手間とコストが削減でき、開発にかかるリードタイムの短縮が期待できます。
また、3Dプリンターは造形する形状に制限がされにくいため、より強度が高くて軽量化した部品を作るなどの、技術の進歩が期待されています。
参考記事:[自動車業界]3Dプリンターの活用事例から読み解く導入効果とは?
参考記事:3Dプリンターは製造業の救世主!導入するメリットや活用例をご紹介
アパレル業界
ファッション業界では、服の装飾やシューズのソールなどに3Dプリンターが活用されています。
3Dプリンターは、使用する機器によっては精密かつ滑らかなプリントが可能で、衣類に使う装飾品やアクセサリーの造形の用途として活用されているケースがあります。
また、スポーツアパレルで有名なアディダスでは、ミッドソールの製造に3Dプリンターを活用したランニングシューズ「フォーディー フォワード(4DFWD)」などの製作しています。
教育業界
世界各国では、IT競争力を付けること、高度技術者を生み出すために、STEAM教育が実施されています。STEAM教育とは、「Science(科学)」、「Technology(技術)」、「Engineering(工学)」、「Art(芸術)」、「Mathematics(数学)」の単語の頭文字を組み合わせた教育概念のことです。
日本国内では、世界各国のSTEAM教育の影響により、文部科学省の教材整備指針にて、子供への3Dプリンターの授業を行うことが推奨されました。子供たちが3Dプリンターを活用することで、ものづくりの楽しさを体験できるほか、考える力なども身につけられるようになります。
3Dプリンターは学校だけでなく、ものづくりを体験できるワークスペースなどでも利用できます。FLASHFORGEでも、3DCADの操作と3Dプリンターの操作を学べる「Go!Go!3Dスクール」を開催しているので、興味がある方はぜひチェックしてみてください。
3Dプリンター世界市場についてよくある質問
最後に3Dプリンターの世界市場について、よく疑問に思われるポイントについて解説します。
新型コロナウイルス感染症による影響は?
冒頭で紹介している矢野経済研究所の世界市場の出荷台数のデータでは、2020年には新型コロナウイルス感染症による影響で、2019年よりも数値が低下しています。
世界中で多くの3Dプリンターメーカー等が、マスクや防護メガネなどを無償提供するなどの取り組みをしていたものの、想定した出荷台数に及ばない結果となったようです。
また、産業用3Dプリンターの導入が加速していたものの、装置が高額であるなどを理由にコロナ禍で停止になった案件もあり、出荷台数が伸び悩んでいます。2023年頃までは、出荷台数の状況は厳しくなると予想されています。
当社では低価格帯(数十万円〜百万円台)の産業用3Dプリンターを取り扱っています。試作だけでなく、最終製品の製造にも対応した製品を販売しているので、導入を検討されている方はぜひお問い合わせください。
世界各国と国内の3Dプリンターの動向は?
アメリカのGE社では、航空機ボーイング747-8に搭載されている3DプリントエンジンブラケットのFAA(連邦航空局)承認を取得し、2019年1月から出荷。材料の廃棄ロスを最大90%削減し、部品重量は10%軽減することに成功しています。
オランダでは、3Dプリント建設企業「MX3D」が2018年にステンレス鋼構造のメタル3Dプリント橋の完成を発表しています。メタル3Dプリント橋は、2019年にオランダのアムステルダムにある運河「アウデザイツ・アフテルバーフワル」に設置予定とのことです。
これらのように世界各国では、最終製品の製造に3Dプリンターの技術が利用されています。また、パーツの在庫を極力低減し、管理スペースや管理コストを抑えるために、モノではなくデータで管理し、必要に応じて現場でプリントするという保守の分野でも活用されています。
一方で日本では、試作や金型製作などの目的で3Dプリンターを活用しているケースが多く、世界各国に比べて用途は限定的と言えます。各業界で3Dプリンターを使った新しい試みや研究がされているものの、海外には遅れを取っている状態です。
まとめ
矢野経済研究所の世界市場の出荷台数のデータでは、3Dプリンターの世界市場の出荷台数は、2019年までは増加傾向にありましたが、2020年には若干の低下を見せています。これは新型コロナウイルス感染症により、財務状況が厳しくなったことや、案件が停止してしまったことなどが原因として考えられています。
しかし海外や日本を問わず、3Dプリンターはこれからも新しい技術や活用方法が発見されることで、世界市場がより成長すると考えられています。特に自動車業界では、製品の軽量化や性能向上、燃費向上を目的として、3Dプリンターの需要が増えると期待されています。
FLASHFORGEでは、家庭用・業務用で使える熱溶解積層方式や光造形方式の3Dプリンターを取り扱っています。3Dプリンターの導入を検討している方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。